・刻の果実









「はぁ……どうしてこんなことになっちゃったんだろ」



両手に大量の荷物を抱えながら、遊戯はため息をついた。
荷物の内訳はゴム手袋、バケツ、ブラシ、雑巾にゴミ袋、洗剤各種……掃除を目的とするものばかりだ。

デュエルに負けた遊戯は仕方なく日曜の朝早くからトップスに赴き、イシズから教えてもらったマンションを訪れた。

トップスのマンションともなればセキュリティは厳重で、遊戯の家のように金属の鍵でもなければカードキーですらない。指紋と声紋、虹彩認証が必要だ。

遊戯は遠慮しますとやんわり断ったが、アテムが寝ていたら家に入れないからと強引に遊戯のそれらも登録されてしまったのだ。

「週に一回行くだけなのにさ………」

アテムの突然の口付けに驚いた遊戯はまたもやアテムの頬をひっぱたき、それからは一言も口をきいていない。
しかし、約束は約束だ。
遊戯はこんなにも憂鬱な日曜を迎えたのは初めてだった。

(それに、今日の夢は最悪だったなぁ)

思い出してまた、ため息をつく。

最近は夢の中にさえアテムが登場し、自分とすっかり仲良くなってしまっているのだ。
この前なんて何も知らないのをいいことに、夢の中でもアテムに騙し騙し唇を奪われてしまった。
それも、深い、恋人同士がするキスだ。

夢から覚めた後もその感触は克明に残っていて、遊戯はしばらくベッドの中で呆然としていた。
一体自分の深層心理はどうなっているのか、本気で不安になる。

そして今日夢の自分はアテムに言われたことを鵜呑みにしたまま、セトに対してキスをねだったのだ。
「好き」という感情にも色々種類があって、キスをしない好きだってある。
当然セトはそれを拒み、「あまり兵たちと下世話な話をするな」と叱られてしまった。

夢の中のユウギは落ち込み、その感情はそのまま遊戯にも影響することになる。
なんとなく気付いていたものの、セトはやはり自分には家族のような感覚で接しているのだ。

それにしても……

好意的に思っているセトに拒まれ、現実ではあまり関わりたくない相手と親密になっていくというのはいくら夢という曖昧な知覚現象とはいえ腑に落ちない。
もはや夢というよりは、まるで決められたストーリーをなぞっているような……。

やっぱり、誰かに相談してみた方がいいのかもしれない。
一番適当なところで、そういうことに詳しそうなな獏良だが……

なにぶん登場人物が身近な人間だけに他人に話すのは抵抗がありいつもその壁にぶつかってしまうが、一人で手に負えなくなってきた今、そうも言ってられない。


動きやすいよう薄手のパーカーとジーンズをロールアップした軽装で、遊戯はマンションに戻った。
わざわざ買出しに行ったのはアテムの家に何もなかったからである。
大方予想していたけど、遊戯はがくっと肩を落とした後、妙にやる気が沸いてきた。やるなら徹底的に、だ。

面倒なセキュリティチェックを終えて扉を開けると、アテムが玄関で壁に寄りかかり寝息を立てていた。

「………………ボクを見送った後、寝ちゃったのかな?」

苦笑しながらも、安らかな寝顔には女慣れした危険性は感じられず、風邪をひいてはいけないからと遊戯は肩を揺すった。

「ん…………戻ったのか」

開ききらない瞼を擦りながら、アテムは立ち上がる。

「顔洗ってきなよ。ボクもがんばるけど、やっぱ自分のことは自分でしなくちゃ!」

アテムの鼻先にビシっと指を立て、遊戯はそそくさと掃除にとりかかった。
しっかりと射程距離を空けているのは二度と唇を奪われないよう警戒しているからだ。

「君はこの部屋の整理。家具を移動する時は呼ぶから。あと、洗濯機とかの使い方も覚えてもらうからね」

来日して一週間経つというのに、アテムの部屋には生活感というものがまるでない。
二十畳はあるかと思われるリビングには放り込まれただけのソファーがビニールを被ったままだし、
なんとか家電類は設置されているものの、駄々広い部屋にはまだ開けていないダンボールがいくつも放置されていた。
アテムが使っていると思われる部屋は寝室と、机やら本棚のある書斎らしき部屋のみ。あとは空き部屋が二つだ。

「よし……!」

遊戯は袖をまくり、まずは家中のホコリを落とす作業に入る。一週間といえど、溜まるものは溜まるのだ。
それが終わったら水拭き。フローリングは自動掃除機に任せて、平行して洗濯、布団干し…いい天気だったのは幸いだった。

部屋にこもっているアテムを尻目に遊戯はテキパキと動き、数時間過ぎた頃には額に汗が滲んでいた。

「そうだ。お昼ってどうするんだろ…」

食器といえばカップとグラスくらいしかない。嫌な予感がしたので冷蔵庫を開けてみるも、やはり空っぽだった。
一人暮らしには大きすぎるその扉にはミネラルウォーターと、アラビア語で書かれたラベルの瓶。

「お酒…?いけないんだー」

「ワインだぜ」

急に背後から声がかかって、遊戯はドキリと肩を震わせる。

「あ……ごめんなさい。勝手に」
「安物だけど飲んでみるか?休憩しようぜ」

何を言い出すのかと遊戯はぎょっとした。

「そんな昼間からお酒なんて…それにボクはもう結構終わったよ」

君は?と遊戯がアテムを見ると、宙を泳ぐ視線。

「……………まさか」

遊戯はアテムに任せた部屋へ駆けていき扉を開けると、まだ累々と積みあがったダンボールが視界に飛び込んできて驚愕した。

「も〜〜っ、なにこれっ」
「つい読みふけってしまった」
「つい、って…」

落胆する遊戯はふとアテムの荷物に本が多いことに気がついた。

「随分古そうな本だね……データ化されてないの?」

ページを開いてみるとホコリの匂いがし、当然文字は読めなかった。
わざわざ日本に持って来ているくらいだからよっぽど気に入っているのだろう。

「データ化しないことで守れる情報もあるのさ」
「…………?」
「これは代々俺の家に伝わる秘蔵文書ってやつだ。古代エジプト文字のヒエラティック…神官文字で書かれている」
「神官…」

夢でよく聞く言葉が出てきて遊戯は動揺したが、バレないよう取り繕った。

「ヒエログリフの行書だ」
「…簡単にした文字ってこと?」
「そう」

アテムは遊戯がエジプトに精通しているのがうれしくて、自然と言葉が多くなる。

「これには王家や神官の儀式、ピラミッドの構造、祭事、占星術なんかについて書かれている…と言われている」
「言われている…?」
「学者や研究者には提供できない代物だから、未だ解読されていないのさ」
「ええっ、そうなの」

ということは、この本の中にはまだ誰にも知られていない史実や情報が詰まっているということだ。
歴史的な発見や、もしかしたらまだ眠っている墓のことなんかが書かれているのかも…

遊戯は目の前に何気なく積み上げられている古書を見て、ごくりと唾を飲んだ。

「仮に学者たちに解読を頼んだとしても、これを読み解くには相当な時間がかかるだろう。
これは遥か昔から…何度か手書きによる書き写しで伝えられたもので、その時々の言語の干渉が見られる。
今はもう使われていないコプト語や…ギリシャ語、ペルシャに支配されていた時の影響もあるな」
「そんな……複雑すぎるよ。よけい専門家に任せるべきなんじゃ…」
「これは門外不出だからそれはできない。だが、俺の一族でこれをどうにかしようとした人間は一人もいなかった」

「…まさか」
「……………まぁ、そういうことだ。俺の専攻は言語学だからな」
「す………すごいなぁ…それでそんなに日本語が上手なんだね」
「………日本語は昔から得意だぜ」
「昔から?」
「いや、なんでもない。それより休憩しよう」
「もーっ休憩休憩って!今日中に終わらなくても知らないからね」


こうしてアテムの家のリビングは初めて居住空間としてその役割を担うことになった。
もっともアテムはワインを開けていたが、彼曰くジュースみたいなものらしい。

「ともかく……自立するために留学したのなら独り暮らしもちゃんとしなくちゃ」
「…早く解放されたいか?」
「そっ……れもあるけど」
本心を言い当てられて遊戯は慌てる。

「それだけじゃないよ。君、ご飯ちゃんと食べてないでしょ?いつか体を壊しちゃうよ…」

夢の中のアテムと、この目の前の人は違う。
頭ではわかっていたが、それを切り離して考えるには夢の中の自分はアテムを好きすぎた。
強引でつかみ所がなく言動が突拍子もないこの転校生と、同一に思えてしまって…

夢ですごす膨大な時間は、出会ってまだ数日しか経っていないのにずっと前から知っているような感覚にさせるのだ。

「心配してくれるのか?」
遊戯には悟られないようにアテムは距離を詰める。

「………だってボク、君の世話を頼まれているのに」
「じゃあ、一緒に食事をしようぜ」
「ママに頼んで、ご飯だけ家で………。ボク、ちゃんとしたのは作れないし」

高校生にもなるとお菓子作りだとか料理が得意な子もいる。
杏子ですら特別な日じゃなくても気まぐれにクッキーやブラウニーを焼いて来てよく食べさせてもらったものだ。
しかし、今までそういうものに関心を持たなかった遊戯はそういうスキルを身に付けていない。
鍋が吹き零れないように見ておくとか、目玉焼きを焼くだとか、ハンバーグを丸い形にするだとか…調理実習レベルに留まる。やったことがないから、料理が得意なのか下手なのかすらわからなかった。

「ママは専業主婦だからなんでもやってくれるしなぁ……少しくらい習っておけばよかった」
「遊戯の手料理か。それも悪くない。安ワインも美味しくなる」
「べ、別に君のためじゃ……って、さっきから何杯も飲みすぎだよ!」

思わず遊戯は軽くなった瓶を取り上げる。
「これくらいどうってことないさ。遊戯も飲んでみろよ。ワインは古くからエジプトで飲まれていたんだぜ?」
「そうなの?」
「ああ」
遊戯は目の前に置かれたグラスの中の赤い液体を見る。

赤くて透き通る…アテムの目の色と同じだ。
こんなに近くでアテムの顔など見たことがないのに、どうして夢はあんなにも鮮明なのだろう。

「うわっ、近いよ。いつの間に…」
「遊戯はガードが甘いな」
「ガードしなきゃいけない人なんて今までにいなかったから…っ」
「なるほど」
「やだーっ離れてよ」

密室に二人きり。前日から十分注意しなければいけないと言い聞かしていたのにいつの間にか肩を抱かれていた。
本当に女の扱いによく慣れている、と遊戯は思った。
遊戯は持ったままのワインボトルを握り締め、身を硬くする。

「何もしやしないさ。ワインはこぼすと厄介だから、暴れるなよ」
そう言うわりには手の力を緩めないまま、アテムはグラスのワインをあおった。
「な、なに…………っ、ん、んんーーーーーーーっ!!!」

突然流れ込んでくる水分に、遊戯は目を白黒させた。
不用意に開いたままだった口は簡単にアテムに塞がれ、彼が含んでいたワインが勢いよく口内に注がれる。
反射的にむせないよう喉をきゅっと締め、信じられない出来事に驚くあまりこの前のように反撃することができなかった。

「…………………じゃ、部屋に戻る」
遊戯の口端から垂れた雫をぬぐい、ペロリと舐めるとアテムはさっさと行ってしまう。
急に視界は広くなったが、遊戯はしばらく動くことができずにいた。

「…………ボクをそういう捌け口にしないでよ…………」

夢では優しいのに……
やっぱり、そういう彼をボクがどこかで望んでいるのかな…?

アテムが欲しいのは世話をしてくれて、色事の相手もしてくれる都合のいい女の子。
きっと家ではちやほやされていて、すべてが彼の思い通りだったに違いない。

「……初めてだったんだよ。キス……」

惨めな心とすきっ腹にワインが染みて遊戯は眩暈を覚えた。
とにかく、早く終わらせて帰りたい。子供じゃないんだし食事くらい自分でなんとかするだろう…

気を取り直して遊戯は取り込んだ羽毛布団を持って寝室に向かった。
間接照明に、大きなベッドが部屋の真ん中に一つ。ベッドメイクするのも一苦労だ。

「こんなのボクの部屋に入れたらベッドだけになっちゃうな」

ひとりごちながらも、なんとか完了。あとはダンボールから食器を出して…

「………あれ………くらくらする……ボク、お酒弱いのかなー……」

「わっ」

遊戯は足がもつれてベッドに倒れこみ、せっかく皺ひとつないよう張ったシーツが一瞬にして台無しになってしまった。

「うそー……もう……」

エジプトで飲まれていたというワイン。
セトも愛飲していたのだろうか…?まだそんな場面を見たことはない。

酸っぱくて渋くて、慣れない味。
全然美味しいと思えなかった。

でもボクが…あれを昼間から飲むくらい好むようになれたら……寝る前にセトさんと杯を交わして…
それからいつものベッドに入って…こんな風に、ふわふわした気持ちで…

そしたらうっかり、キスをくれる…かな……



布団に染みこんだ太陽の匂いに遊戯は目を閉じ、まどろみの波を漕いで深い深い夢の海に落ちて行った。








「…………遊戯?どこだ?」

1時間ほど経った時、物音がしなくなったことに気がついたアテムは不審に思い探しにやってきた。
ベランダにもリビングにもいない。空き部屋にも。

怒って帰ってしまったのだろうかと寝室のドアを開けると、自分のベッドで寝息をたてて丸まっている遊戯を見つけ、思わず苦笑した。

「疲れて眠ったのか……」

傍にいてほしかったからとはいえ、少々無理な条件を通してしまった。
真面目な遊戯が約束を反故にするわけがないという自信はあったが、嫌われても仕方がないと思う。
それでも……それでも耐えられない。もう十六年も離れ離れだったというのに。

アテムはベッドに腰掛けると、遊戯の頬にかかる髪を耳にかけてやった。
柔らかそうな肌を、指の背でなぜて確かめる。


「相棒…………」


もう呼ぶことはないのだろうか?
世界中でたった一人を呼ぶ、大切な呼び名だ。


小さな頃は記憶を持たなかった。
ただ漠然と誰かに会わなければいけない気がしていて、一人で砂漠へ彷徨い歩いては親に怒られていたものだ。
イシズが言うには日本に異常なほど関心を示していたらしく、父親が外交の仕事で一度日本に行くことになった時はついていくと聞かず、癇癪を起こして大泣きしたらしい。

『普段わがままを言ったりしなかったものですから、家中の人間が驚いていました。その時のことはよく覚えています』

ときどき昔話をすると、イシズが自分をからかう材料にその時のことを持ち出してくる。
今ならその行動の説明も付くが、言われる度に気恥ずかしさが付きまとう。

やがて自我というものを持ち始めた時……なんのきっかけもなくアテムは『知っている』状態になった。
脳内で劇的なハレーションが起こったわけでも、記憶の箱の南京錠が外れたわけでもない。

ただ一週間前何をしていたか思い返すのと同じように…前後の記憶を辿り、自然に思い出せた。
三千年前のこと、命をかけた決闘のこと、幾多の試練、邪神との戦い……そして、別れ。

涙は出なかった。
ただ頭の中にはっきりと、自分の行くべき道が浮かんでいたことを覚えている。


自分もそうだったから、遊戯もそうだと信じて疑わなかった。
同じように会いたくて胸を焦がしていると…会えばもう二度と離れはしないと誓っているものだと思っていた。

しかし現実はそう甘くはない。
相棒と認めたほどの彼の性別は女になっていた上に、記憶の一切を持っていなかったのだ。

初対面こそギャップを感じたが、話してみると全体的な雰囲気は変わっていないことに気付いた。
女性になった分柔らかく、一回り小さく、しぐさは愛らしい。

彼の面影を追ってしまうものの、彼女は『今』を生きている…。
自分を必要としない、今。


頬を叩かれてから予想はしていたが、手を伸ばせば届く距離にいるというのに遊戯がこちらをチラリとも見ないというのは思った以上に堪える。
前世では常に自分が隣にいて、彼を守り、頼られ、絶対的な信頼で結ばれていた。
いや、自分は彼の心の中に居ついていたのだからそうならざるをえなかったのかもしれない…今になって考えれば。

では同じ世に生まれた意味は…?
記憶を持っている意味は…………あるのだろうか。


答えはまだ、ない。

しかし未熟な遊戯が誰かのものになることなど許せるはずもなかった。
それは男であろうが女であろうが関係はない。
遊戯という存在自体を、アテム・イシュタール自身が欲しているのだ。

心は離れていようが、触れたいという気持ちは止まらない。
こうして今生きているという…証なのだから。



「う……ん……………アテム………」

身じろぎする遊戯の口からこぼれた名前に、アテムは驚いた。
まさか自分の名前が出るとは。

「遊戯……?起きてるのか?」

声をかけてみれど、返事はない。

「…はぁ、ん……ま、待って………わい…怖いよ……」

寝返りをうつ遊戯の息は浅く、苦しそうにもがいているようだった。
夢にうなされているにしては様子がおかしい。
紅潮した頬に、こうも悩ましげな声を出すものなのか?

「遊戯、目を覚ましてくれ。苦しいのか…?」

アテムは強めに揺すってみるが効果はない。
まさかなにか患っていて発作的なものだろうか……それにしても。

「や……だぁ………アテ…ム………ん………」

「……………………」

どうやら夢の中で遊戯を困らせているのは自分らしい。
一体どんな夢だろうと不安になるものの、遊戯の夢に出るなんて結構な進歩ではないだろうかとアテムは少し嬉しくなる。

「相棒……何が嫌なんだ……?言ってくれ……」

さらに問いかけてみても、遊戯は一向に起きる気配がない。
となるとアテムに出来ることは限られていた。

「……………嫌なら起きて……俺をつきとばしてくれ……じゃないと、知らないぜ?」

アテムは遊戯に覆いかぶさり、ゆっくりとその首筋に唇を落とした。
これはからかい半分のキスとはわけが違う。親愛なる人に贈る……愛撫だ。

「相棒…………」

ベッドが軋み、真昼の太陽が落とす直線的な光が部屋に入ることはない。

アテムは遊戯の体温をむさぼる様に求めた。

手の平や腿…頬……体全部でそれを感じたい。
ずっとずっと望んでいたものだ。

伸ばした手が空を切り、触れられなかったあの頃から。


意識のない相手とするほど、悪趣味ではない。
ただ許されるところまで……盗むような行為でも、今はよかった。

パーカーをめくりあげ、ブラのフォックを外すとその小ぶりで白い胸がたわわに揺れる。
アテムはためらうことなくその双丘に顔をうずめ、愛しげに口付けた。

優しく回すように胸を揉みしだき、ジーパンのボタンにも手をかける。

「………あ、アテム………」

さすがに意識を取り戻したかとアテムが見やると、まだ遊戯は半覚醒のようで目の焦点が合っていない。
もはや起きようがこの行為を止めるつもりがないアテムは遊戯の唇を塞ぎ、遠慮なく舌を入れ唾液を味わった。

「ん…っ、んん……はぁ、はぁ………」

驚いたのは遊戯が舌を絡めてきたことだ。
まさか誰かとしたことが…?
イヤな考えが浮かんだが、今はどうでもよかった。むしろ反応があるとよけい煽られる。

「ボク………アテムになら………君と一つになれるっていうなら……」
「なにを……言っているのか……わかってるのか………?」


部屋には静寂と、二人の掠れた声が混在していた。
アテムは遊戯のジーンズを下げると、下着の中へ指を滑らせる。




「君と、なら………怖くない………」










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