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●じつはね。

 

(草食男子なヨハンと女体十代子ちゃん:高校生パロ R-18)
written by ペンコ


 


「ヨハン、好きだ!俺とつきあって」
「……………………………………………いいけど」

 

こんな感じで、俺の一世一代の告白は長い沈黙の後奇跡的に受理された。
そりゃあドラマや少女漫画みたいに「俺も好きだったんだ、十代」とかって感動的に抱き合ったりはしないのはわかってたけど、
あまりにあっさりとうまくいって俺は肩透かしをくらった気分だった。

でもずっと好きだったヨハンとつきあえるんだという実感が湧いてきて俺はすぐに舞い上がりそんなことはどうでもよくなった。

それから、数ヶ月。

 

「………なーヨハン、今日は何するんだ?」
「今日中にこの本読み終わりたいんだ」
「…………………」

これすなわち、本日も一日家にいるってこと。

両親が年中海外出張でほぼ一人暮らし同然のヨハンの家のヨハンの部屋で
俺はルビィ・カーバンクルのぬいぐるみを抱きしめながら一人ふてくされ、カーペットの上をごろごろと転がった。

例えばここで俺が機嫌を悪くしてみても、ヨハンは気付かないし、気付いてもその理由が自分にあることなんてこれっぽちも思わない。
何度かやってみたけどあまりのむなしさにもう拗ねる気力もなくなっていた。

運命の告白からの俺たちと言ったら、まだキスどころか手すら握ったことがない。
学校からの帰り道、一緒に帰ろうって誘うのも俺からだし、
メールも電話も、こうして休日家に押しかけてるのももちろん俺から。

普通こんな密室に心を確かめ合った男女がいたら何かしらラブなイベントが発生するもんじゃないのか?
もちろん俺だって何もかも初めてだし最初はそんなこと考えすらしなかった。
けど、けどもだ。
日がたてどあまりにも進展がなく、
友達の経験談なんかですっかり耳年増な俺は二人の関係が世間一般に言われている男女のつきあいとはほど遠いことに気付いたのだ。

なんとかヨハンの気を引こうと制服のスカート丈はだんだん短くなり、シャツの胸元を少し意識して開けてみたり、
化粧だっていっぱい練習して流行に遅れないようにしてるし、日々の努力は怠らない。
が、これもまたヨハンの前では何もかも役に立たないのだ。
髪を切っても一言も声をかけられなかった時はさすがに泣きたくなった。

そして今日もこうして寝転がってスカートから太ももをちょっと露出させても、
無関心なヨハンはチラリともこっちを見ないのであった。
……俺って馬鹿みたい。


どうする?奥の手を使うか?

出来れば使いたくはないが、このままヨハンの部屋に「居るだけ」よりはよっぽどマシだろう。
仕方がない。

「俺、デッキ持ってきてるぜ」
「………お、ほんとか」
魔法の言葉でやっと文字から放される視線。

「デュエル、する?」
「する」


やった、
と心の中でぐっと手を握る。

何をしていてもヨハンはデュエルには関心をしめす。
要するに読書より音楽鑑賞よりなによりデュエルが好きなのだ。

ヨハンは強いしデュエル自体は楽しいし、付き合っているのに片思い状態よりはよっぽど充実しているのだが
帰り道はいつもがっくりと肩を落とすことになる。

『俺って、ただのデュエル友達?』

心にあれど、口にできないその想い。

でも「俺のこと好き?」と聞けば「うん」と返してくれるので
その言葉だけを一縷に信じる日々だ。


結局その日もデュエルで終わってしまった。
嗚呼。

 

こんなに一緒にいるのにヨハンのことが全然わからない。
男女平等主義なのか、俺が重い荷物を持っていても持ってくれないし、一緒に歩いてる時車道側を進んで変わってくれるなんてこともない。
電車で俺の隣が男の人でも平気。

そうするのが当然だなんて思ってないけど、彼女として特別に扱われたいと思うのは普通のことだろ?
考えれば考えるほど落ち込むけれど、だからと言って彼女を辞める気はなくて。
なぜかというとヨハンはめちゃくちゃモテるのだ。

人当たりがよくがっついてないくて、さらに優しいので女子も話しかけやすい。
現に、女の子から頼みごとをされて断っているところなんて一度も見たことないし。

成績も悪くないし、金髪碧眼ではないものの外国人特有の白い肌、ばしばしの睫毛、
糸みたいに細い髪とくれば女子が放っておくわけがなくて、
現に学年で一番かわいい子もヨハンを狙ってるって聞いた俺は、いてもたってもいられなくなって放課後の校門前、
みんながいるのも構わず告白に踏み切ったんだ。
玉砕覚悟だったけど、ヨハンは俺を受け入れてくれた。
友達みんな喜んでたものの、それからは不満が溜まって俺は日々悶々としていたのだった。


そんなある日の放課後。


「おーい、遊城、俺の知り合いがさ、DJやっててイベントやんの。お前も来ねぇ?お前のクラスの女子も何人か来るって」

「え……………」

突然ひとりの男子に声をかけられる。
同じクラスではないが中学が同じだったので顔は知っていた。えーと名前は……なんだっけ。

「初イベントだから人集めててさ。なに、オールじゃねーし適当に楽しんだらみんなで居酒屋行ってカラオケでも行こうってなってんだけど」

まだ返事もしてないのにベラベラと予定をまくしたてる男子生徒に俺はたじたじになっていた。
なにもヨハンが隣にいる時に声をかけなくてもいいだろっ

困り果てた俺は横目でヨハンの顔を見て助け舟を期待したが、ヨハンの様子は至って普通。
こともなげなその様子に俺はだんだん腹が立って来た。

今までの付き合いの中でそんなことを期待してはいけないことはわかっていたが
彼女が目の前で浮ついたイベントに男から誘われてんのに何とも思わないってのはどーいうことなんだよっ

いざって時はバシっと「これは俺の彼女(コレ)」っとかって決めて欲しいのに!

「ど、どうしよっかな〜〜〜〜〜」

ヨハンが何かアクションを起こさないかと答えを引き伸ばしてみたが、
携帯を見て時間を気にしだしたのを見て俺はキレた。

もうヨハンなんて知らねー!!!

「●●子も来るしさ、××ちゃんだって…」

「行く」

「え」

「俺も行く」

「マジでっ!?やったー遊城が来たら俺の株があがるぜー!」

言ってしまったの仕方がないし、別に夜遊びしたことがないわけじゃない。
でも相変わらずノーリアクションなヨハンに、俺はさらに落ち込んだのだった。

 

 

『今から△△っていうクラブに行ってくる、帰ったらまたメールする』
そうメールを打って、送信ボタンを押さないまま消去した。

こんなメールしたってヨハンが俺の帰りを心配することなんてないし、
さっさと寝てしまうんだろう。

大人っぽく見えるように黒を基調とした流行の服にマイクロミニのパンツ、ニーハイのロングブーツを合わせて少しカジュアルに。
なんとなくスカートをはく気にはなれなかった。
パーティ用の小さなバッグに携帯をしまうと、俺はクラスの女子たちと合流した。
暗く小さな室内に流れる大音量のハウスミュージック、煌びやかなライト、
所狭しと人々が音に身を委ねていてすぐ隣にいる子と会話するにも耳元で叫ばないと聴こえないほどだ。

「おーい、こっちこっち!」

俺たちを誘った張本人が手招きするのが見え、俺たちはいわゆるVIPルームと呼ばれる場所に招待され女子たちは目を輝かせる。

「うっそーあんたすごいじゃん!」
「まぁな。オーガナイザーが特別に使っていいってさ。でも飲み物は自分で取りにいけよな」
「オッケー!今日は踊るわよ」

みんな嬉々として人の波に飛び込み、ガラス越しにさっそくナンパされてたり楽しく踊っている姿が見えたが、
今日は全然そんな気になれなくて、VIPルームのソファーでちょこんと座ったまま来たことを後悔しはじめていた。

はぁ………俺、なにしてんだろ。
家に帰ってデッキでも組んでた方がマシだったかな……

俺が少しでも強くなれば、ヨハンも喜ぶだろうし。


そう考えて、またがっくりと肩を落とした。
ほんとアイツ、今流行りの草食系って言うか性欲ってもんがないんじゃねーの?!

俺はいつだって、いつだって……身を捧げる準備はできてるのに。

でも行きつく答えはいつも同じ。
本当はヨハンがどうとかではない。

自分に魅力がないのだ。
自分はヨハンに求められるような人間ではない。

それを認めたくなくて、ヨハンに文句ばかり言ってる。
キスも、手をつなぐことさえもなく、ヨハンの体温を知ることなく、この恋はいつか終わる気がしていた。

果てしなく不毛で、悲しい。

欲求不満と愛情不足で心が疲れ果ててしまって、
それでも別れたくないという思いもあって、ジレンマの迷宮をぐるぐると歩き彷徨うのだ。

はぁ、と大きくため息をついたら例の同級生が扉を開けた。

「あれ、遊城踊りにいかねーの?」

音楽が大量に流れ込み、扉が閉じるとまた遠くなる。

「なんかそんな気分になれなくてさ…」

八方美人になりきれない、ぎこちない笑顔は引きつっているかもしれない。
部屋が暗がりで助かった。

「酒が足らねーんじゃねーの?まっ、遊城はそんなタイプでもないか」

男は俺の隣に座り、手に持っていた瓶の中の酒を一気に飲み干した。
その様子をぼんやりと眺めながら、いつ帰りたいと切り出すかタイミングを見計らっていた。

さすがに今帰るのは早すぎるだろうか…

「遊城、最近急にかわいくなったじゃん?あいつ、ヨハンのせいかと思うとスゲーくやしくてさ」
「えっ」

か、かわいいって…っ
今かわいいって言われた…!

たったその一言がほしいために努力して努力して、
それでももらえなかった言葉がこんな簡単に聞こえたのだ。

「でもさーなんかお前ら見てるとつきあってる空気出てないんだよな」

続けられた言葉に、グサっと胸をえぐられる。

「そ、そう………?」
「あ、図星か?」

いたずらっぽく笑う同級生に返事ができず、俺はまた自己嫌悪の渦に飲み込まれそうだった。

「今日誘ったのも、人数集めって言ったけど……本当は俺が遊城と会いたかったからなんだぜ」
「え?」

マズイ、こ、この流れは…っ

自分が座っている奥は壁で、扉は相手の向こうだし、
だんだん近くなって来ている気がする顔はよく見ると目が酒で据わってるしっ

「ちょ、待て、落ち着けっ 飲みすぎだよお前」

俺はじりじりと後ずさるもすぐ背中には壁があたり追い詰められる。
遠慮なく足で押し返しているのにまったく怯む様子がなく、あせりはだんだん恐怖に変わっていった。

嘘っ、やだっ
もしキスでもされたら……
ヨハンともまだしてないのに…!

ていうか、ヨハン以外の奴となんて…!


外の友人たちが戻って来やしないかとホール内を見れど、誰も戻って来る気配はない。
マジックミラーだからこっちの様子は向こうから見えないし…
そうこうしているうちに男の体重が足に乗り、覆いかぶさってくる。


「やめろ!どけっ!いや……っ!!ヨハン!!!」

酔ってはいても相手は男だ。高校生にもなれば体格も力も女とは何倍も違ってくる。
防音もばっちりなこの部屋で何があっても誰も気付かないだろう。
ただでさえ外は音の洪水なのだ。


馬鹿だ…俺…
勝手に怒って……名前呼んだって来てくれるわけないのに……


「遊城もそのつもりで来たんだろ…?」

手首を押さえつけられソファーに沈められる。
タバコとホコリの匂い、酒臭い息が顔にかかって気分が悪くなった。


こんなとこで俺の初体験が終わってしまうのか…
よく知りもしない相手の誘いにのってしまった自分の愚かさに涙も出なかった。

押し倒されて、天井の暗いライトが目に入る。

せめて終わるまで目を閉じていよう…

そう思い、瞼を落としかけた時だった。


「十代、何してんの」


人の声。
いや、これは………嘘だろヨハンの声だ。


落ちついた声色とは裏腹に、俺にかぶさっていた男の襟を掴み上げると瓶やら灰皿やらあったテーブルの上に叩きつけた。

氷が散乱し、グラスが転がる。

「何すんだてめぇ……ヨハンか」

男は酒が回ってるのか立つのもやっとのようだ。
俺は震えが止まらなくてその場から動けずにいた。

どうしてここに…


「十代は気分が悪そうだから連れて帰るぜ」

そう言うと俺の手を引いて立ち上がらせると、肩を強く抱かれる。
俺は状況が掴めないままなのに初めてこんなにも近くにヨハンがいて目が回りそうになった。

前後不覚の同級生はテーブルに寝転がったままぐうぐうと寝てしまい、
俺たちはホールの雑踏を抜けてクラブの外へ出る。
街灯の光が落ちるアスファルトの夜道は中の騒がしさとはうってかわって静けさがあり、車の通る音だけが夜空に響いていた。


「ヨハン……………」

もうダメだ。
あんな決定的なところを見られるなんて。
こんな馬鹿な女……ヨハンとつり合うわけない。

元々、相手にされてなかったけど…

「う…、うっ、」

悲しくって情けなくって、後悔しても何もかもが遅くて、
目に溜まった涙を押し込めることなど到底できなかった。

ボロボロと落涙が服の上をすべり、ブーツのつま先へ落ちる。

嗚咽は止まらなくて、俺は声を出して泣いた。
好きでもない女に泣かれたってウザイだけなのに、
泣き止もうと思えば思うほど喉が引きつって涙が溢れる。

無言のままのヨハンの顔を見るのが怖い。
あのキレイな翡翠の目に俺を映さないで。
軽蔑しないで。
冷たくしないで。
嫌いにならないで。


ただ必死に、ごめん、と繰り返していた気がするが感情が溢れてその後どうやってその場を後にしたかは覚えていない。
一言も発しないヨハンに連れられ彼の家に着いても俺はまだ泣いていた。


「ひっく…うう……うぇ……」

リビングの絨毯に座りこんだ俺の泣き声だけがさめざめと室内に広がる。


「……だい。じゅーだい」

ヨハンの声に、不意に顔を上げた時だった。

「…?!つめた…」

目元に当てられた四角いコットン。
何か液体が浸されていて、それが冷たく頬に染み込む。

突然のことに俺はびっくりしてキョトンとしていた。

「母さんのメーク落とし。無駄にブランド物だからいいやつだと思うんだけど」

そう言うと手際よく顔中に滑らせて、涙でヨレるどころではない、ドロドロになった俺のファンデーションをきれいに落としてしまった。
アイメークは新しいコットンを数秒まぶたの上で押さえ、マスカラまで上手く拭いてくれる。

「さぁ、キレイになった。十代は化粧しないほうがかわいいぜ?」
「え、そう…?」

俺は耳に飛び込んできたヨハンのセリフが信じられず、ただ呆然としていた。
もちろん驚いて涙も引っ込んでしまっている。

「次は…化粧水だっけ?」
「……う、うん」

ヨハンはボトルに書かれた小さな文字を目を細めながら確認すると、
またコットンに染み込ませどこか楽しそうにパッティングをし始める。

されるがままの俺は作業に没頭する真剣な表情をずっと見つめていた。
ヨハンの近くにいるだけで、こんなにも安心する。
やっぱりヨハンが好きだ。
何も与えられなくてもいい。ただ傍にいられれば…

「あいつさ、女の子をクラブに呼んでは食っちゃうって有名な奴だったんだ」
「嘘………」

ヨハンの言葉に愕然とする。

「たまたまユベルに会ってさ。そういう噂を聞いて…クラブの名前と場所も調べたけど、ほら俺って方向音痴だろ?
なっかなか見つかんなくて、遅くなった」

ユベルっていうのはヨハンの3つ下の従兄弟で…俺と出身中学が一緒で…ってそんなことよりも。
ヨハンが、俺を…?探して…?

「心配してくれたのか…?」
「焦ったぜ。間に合ってよかった」

焦る…?ヨハンが…?

ヨハンが大きな手の平に乳液を伸ばし、ゆっくりと俺の頬を包み込む。
円を描くように撫でられて、その体温が心地よくて。

「ごめん…、俺、俺……」
「怖かっただろう。もう安心していいぜ」
「ちが……うっ、俺……」

ヨハンが信じられなくて、
そのせいで一番大切なものを失くすところだったのかと思うと、情けなさと安堵で再び目が滲んだ。
そんな俺をヨハンは優しい笑みを湛えて涙を拭ってくれて。

「でも、ちょっと無防備すぎるかな」
「うん……」
「ガードが甘いっていうか」
「うん、うん。」

ヨハンが肩を抱いてその胸へ引き入れてくれる。
まるで子供のように抱っこされながら俺は必死に相槌を打った。

囁かれる言葉に全部従ってしまいたい。
ヨハンが俺のために紡ぐ言葉全部がこんなにも嬉しいなんて。

「●●と××と遊ぶのは、ちょっと控えたほうがいいかもな。あいつらしょっちゅうああいうところ行くだろう?」
「うん、うん、もうあの子たちとは遊ばない……」

その二人は何かと俺を夜遊びに誘ってくれる子たちだったけど、
今日みたいなことがあった以上俺はもうああいう場所に行くことはないだろう。

「いい子」
「ヨハン………」

下から見るヨハンの睫毛が蛍光灯に透けて、キレイだ。
微笑みかけるその顔は今までに見たことがないほど艶があって、別人かと思うほどだった。

「十代は?俺にしてほしいことある?」
「え………?」

意外な言葉に俺は思わず身を起こした。
いつもマイペースなヨハンがこんなことを言い出すなんて。

昨日までヨハンにしてほしいことは数えきれないほどいっぱいあった。
でも今はすべてが小さなことになって、願うのことは……ただ一つだ。

「俺、ヨハンのこと何も知らない。方向音痴だなんて今知ったし……」
「そうだっけ?」

「ヨハンのことが知りたい。ヨハンの声で、身体で…ヨハンの全部を俺に刻み付けて」

最大限の勇気を振り絞り、震える手でヨハンの首筋に触れた。
柔らかい襟足の髪が指先に絡まり、その薄い唇を見つめる。

「そしたら、もう揺れないから……ヨハンだけの俺になれるから…」

これは二度目の告白だ。
最初のよりもずっと苦しくて、切ない。

初めは憧れだったのかもしれない。
でも今はヨハンのことがこんなにも好きで。

「…………キスしていい?」

ヨハンが俺の頬に触れ、顎をすくう。

「……聞くなよそんなこと」

俺が俯くと、ヨハンが笑って空気が軽くなり、
その後まるで密を吸うように俺達はそっと唇を合わせた。

 

 

 

「………十代って結構胸大きいよな。知ってた?」
「そう……?標準だろ…?」

発育途中な胸はまだ時々成長痛がある。
そういえば最近ブラがキツイような…

カットソーが脱がされ、ブラのフォックを外され、胸があらわになるとさすがに気恥ずかしくて。
ドキドキと心拍音が耳にうるさい。

「だから…制服はちゃんとボタンを止めてほしいかな」
「…………わかった」

ヨハンの気を引くために少しでもかわいく制服を着こなしたくてしていたことだったのに
ヨハンには逆効果だったってこと?

リビングのソファーに寄りかかりながら、ヨハンがゆっくりと俺のひざを割り内股に唇を落とす。
まるで何かの神聖な儀式の始まりのような気がして、俺はそんなヨハンの様子を熱っぽく見つめていた。

「十代の太ももが細くて柔らかくて…魅力的だってことは俺が知ってればそれでいいことじゃないかな?」

微笑むヨハンはまるで天使のよう。
でもその口からこぼれる言葉は悪魔の囁きのようで、逆らうことなど到底できそうにない。

「うん、スカートも…元に戻す」

俺がそう答えるとパンツのボタンが外され、脚を滑ってゆっくりと取り払われる。
下着一枚になった俺はヨハンの視線に身じろぎしながらも、高鳴る鼓動に支配され今か今かとヨハンを待ち焦がれていた。

「好きだよ」

その言葉はまるで麻酔のように全身の力を奪っていく。
開いた口からヨハンの舌が口内に侵入し、俺は夢中になって唾液を求めた。

ヨハンの愛撫に息も絶え絶えになり、室内に細かい吐息が散らばる。
胸を揉みしだかれ手淫まではなんとか耐えれたものの、口淫が始まりヨハンの舌が侵入するとさすがに声を抑えることが出来ず
そして一度声を出してしまえば乱れる自分を止められなくなっていた。

「はぁ、ん、っあ……あ、ん……っ、なにこれ………すごい……気持ちいい……」

初めては痛いだとか気持ちよくないだとか色々聞いてはいたが、そんなことは人それぞれなんだと思った。
普段あれだけ淡白なヨハンからは想像出来ないくらい情熱的で、身体のあちこちが熱を帯びて血液が沸騰してるんじゃないかって思う。

抱きしめられるヨハンの肌は心地よく、自分以外の体温と混ざり合う感覚はどこか安心する。
身体の隅々までヨハンのシルシが刻まれ、体内に侵入されればもう抗うことのできない何かに支配されたようだった。

「………痛い?」

ヨハンは表情を変えないが、頬を伝う汗は色っぽいし、
顔を歪める瞬間を見てしまうと、ヨハンも感じてくれているのかと嬉しくなって自分のアソコに愛液が分泌されるのがわかった。

「痛くないわけじゃないけど、ヨハンと繋がって嬉しい方が勝ってる」

俺の言葉にヨハンは微笑むと、ゆっくりと腰を動かし始め膣奥まで内壁を擦った。
その質量に俺の開いた脚は空中にピンと張り、ヨハンが俺の肩を引き寄せると最奥にまで届く。

ヨハンの激しい律動を受け止め、喘ぐ自分がガラス戸に映っていても気にならないほど、幸せを感じてた。
いくらなんでも、身体を重ねる行為に気持ちが入ってるか入ってないかはわかる。
だって女だもん。愛がなくちゃこんなに気持ちよくなるわけがない。
何度も何度も抱かれて、お互い何回果てたかわからないほどだった。

ああ、俺ってヨハンに愛されてたんだなぁ……

一つの毛布に包まり、寝息を立てるヨハンの腕の中で俺は涙を一つ落としたのだった。

 

 

 

「………ってことがあってさー!!!」

目尻を下げながらほくほくと十代が語るノロケ話を天上院明日香は半ば呆れながら聞いていたが、
彼女が幸せな恋愛をしていることを嬉しく思った。

「そう、そんなことがあったの」

楽しそうに昼食のお弁当の箸を運ぶ十代は制服のカッターのボタンを上まで止め、スカート丈は膝下、
化粧も最小限の手入れしかしておらず以前よりすっかり地味になっているが本人は至って上機嫌だ。

派手な噂の多い同級生とも学校のみのつきあいになっているみたいだし、
目立つこともなくなって、チャラチャラした男子が彼女にちょっかいを出すこともなくなった。

ただ潜在的に顔の造りがよく明るく元気な彼女にひそかに想いを抱いている男子はまだ何人かいると聞くが、
あのヨハン・アンデルセンの彼女と知っていながら告白することなど相当の度胸がいることだろう。

「まぁヨハンは相変わらずなんだけどさ。それでもいいかなって」
「すっかり骨抜きね」
「へへ…まぁな。草食男子とつきあうのも大変だぜ!」

以前は不満ばかりこぼしていたのに、この変わりようはどうだろう。
十代の話を聞いていて明日香はヨハンが草食ということに違和感を覚えていた。

あれだけ成績優秀な彼のことだ。
理想の彼女にするために長期的な計画を練っていてもなんら不思議ではない気がする。

十代を追い詰めて、絶妙なタイミングで毒牙にかける。
現に毒の回った十代は以前よりずっとヨハンにメロメロになっているではないか。


「あ、ヨハンだ。ヨハーン!」

廊下を通りかかったヨハンに十代が教室を飛び出す。
頬を赤らめて話す十代に目を細めるヨハンが、一瞬こちらを一瞥するのが見えた。

その目は決して十代には向けられることのないだろう、冷たい目だ。


「あら、女友達にも容赦ないってワケ?」


苦笑する明日香は恐ろしく美しい男が舌なめずりするイメージが浮かび、ヨハンにぴったりな言葉を見つけた。


「ヨハン君て草食系男子っていうよりは」

 

爬虫類系、って感じ。

 

 

 


END

 

 



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