・‥…━━━★゚+.* MY  TREASUREs *.+゚★━━━…・‥


8月の自分の誕生日にかこつけて、お友達に「なんかくらさい(・∀・)」と図々しくお願いしたところ、
とってもすばらしい作品をもらってしまいとっても有頂天になりました。
掲載許可をもらいましたので、ぜひ皆様にも読んでいただきたいです^^

で、何かテーマがあった方が書きやすいし、お三方の感性で違った捉え方を読んでみたいなぁということで
丁度描いていたヨハ十絵をテーマにさせていただきました。


それがこれです▼

ほんとどうしようもない絵ですが、どの作品にもこのシーンが出てきます^^
ではお楽しみください。ほんとにほんとにありがとうございました!!!!!!

(タイトルクリックでジャンプ)

★月成美柑さま
└・勇気の出る魔法

★Sainaさま
└・やさしい待ち時間

★緑豆さま
└・恥らう君のために(3編)



















 

 

 

 












・勇気の出る魔法 Magic Candy








 
ブルー寮の広いエントランス。そこに十代が駆け込んできた。
「やあ、十代くん」
ロビーの椅子に腰かけて本を読んでいた天上院吹雪が声をかける。
「ヨハンから、伝言を預かっていてね、急にクロノス先生に呼ばれて少し遅くなりそうだから、部屋で待っていて欲しいそうだ」
「あ、はい。ありがとうございます」
十代は答えた。その後に小さくため息をついたのを見て、吹雪は微笑んだ。
「ヨハンも早く君に会いたいはずだよ。うまくいってるのかい」
「え、うまくって、あの・・・」
十代の顔がぱあっと赤くなる。
「俺たちは友達で、そんなんじゃ」
「そんなって?」
「い、いや、ええと」
うろたえる十代に、吹雪は思わず吹き出した。正直なことこの上ない。
「なんで笑うんですか」
「いや、ごめん、ごめん」
吹雪はクスクス笑いながら、言葉を続けた。
「これだけ明白なのに、ヨハンは気づいてないのかな、きみの気持ちに」
「お、俺の気持ちって」
「好きなんだろう、ヨハンのこと」
図星をさされ、十代が耳まで赤くなる。
「だけど、俺は男だし、ヨハンも男だし」
「恋愛にジェンダーなど関係ないさ、大事のはお互いの気持ちだろう。思い切って打ち明けてみたらどうだい」
「で、でも」
「勇気がない?」
十代はさらに赤くなって頷く。
「じゃあ、勇気の出る魔法を授けてあげよう。これは内緒なんだが」
言いながら吹雪は十代の耳元に口を寄せた。
「実は僕の叔母は魔女なんだ」
「ええええーー!!!」
「その叔母から昨日魔法のキャンディーが届いてね」
ごくっ、と十代が唾を飲み込む。
「それを食べれば、不思議に勇気が沸いてくるんだ」
「ほ、ほんとに?」
「本当さ。これから僕の部屋においで。勇気の出る魔法を分けてあげるよ」
「いいんですか」
「もちろん、僕は愛の伝道師だからね、いつでも恋する者の味方だよ」
吹雪はそう言ってウインクした。


「さあ、これだ。開けてごらん」
きれいに包装されたパッケージを開くと「Arc−en−ciel」と書いてある。
魔法の呪文かなんかだろうか、と十代は思った。
箱の蓋を開ける。
「わあ、すっごい、きれいだ・・・」
虹の七色、赤・橙・黄・緑・青・藍・紫の順に砂糖菓子が並んでいる。見ているだけでうっとりしてくるほど美しい。
感嘆している十代をみて、吹雪はにっこりした。
気に入ったかい?
「うん、でも、これほんとにもらっても」
「もちろんかまわないさ、叔母も喜んでくれると思うし。きっと勇気が出るよ」
「ありがとう、吹雪さん」
十代は嬉しそうに笑うと、一礼して部屋を後にした。
魔法のキャンディをしっかりと抱えて。
ドアが閉じられる。
「Good luck!」
吹雪はドアに向かってそっと呟いた。


ヨハンの部屋。ノックしたが返事がない、まだヨハンは戻ってきていないようだ。
十代は、がっかりしたが、同時に少しほっとしていた。
ドアを開けて、ヨハンの顔を見てしまったら、「告白しよう」という勇気がなくなってしまいそうだ。
部屋に入り、ソファに腰掛ける。
「勇気が出るってほんとかな」
十代は呟き、箱の蓋を開けた。
赤いキャンディをつまんで、しげしげとながめる。
どうやら、キャンディ自体は半透明で、中に入っている液状のものの色で赤く見えるらしい。ひょっとしたら、中に入っているものは魔法薬か何かだろうか。
「ほんとに効くのかな、苦かったらいやだな。それに変なもの入ってないだろうな、イモリの黒焼きとか・・・」
しばらく眺めた後、思い切って口に入れてみた。
「あ、うまい」
ひんやりとした感覚があり、ほのかに甘い。しばらく舌の上で転がしていると、表面が溶け、中の液体が出てきた。
苦味はない。甘みと酸味、そしてなんともいえず良い香りが口いっぱいに広がった。
何か果物の香りらしいが、十代の馴染みのあるイチゴやオレンジなどの香りではない。
もしかしたら、魔法の果物なのかもしれない。
なんだか、ほんとに勇気が出そうな気がする。
十代がそう思っていると、部屋のドアが開いた。十代の心臓が跳ね上がる。
(ヨハン?!)

 

ブルー寮の階段をヨハンは駆け上っていた。
ずいぶん十代を待たせてしまった。ひょっとしたら怒っているかもしれない。
クロノス先生はイタリア出身だ。日本に住んでずいぶんになるらしいが、やはり故郷が懐かしいのか、

北欧とはいえ同じヨーロッパ出身のヨハンを呼んでは、欧州の話を聞きたがる。
嫌だというわけではないが、十代との約束があるとなれば話は別だ。
帰国までの数ヶ月、一秒でも長く十代のそばにいたい。
十代はヨハンのことを親友としか思っていないが、ヨハンは違う。
初めて会った時から、ヨハンは十代の琥珀の瞳に魅せられていた。
極上のコニャックのように美しい色だと思った。
そして、今でははっきりと自覚している。
十代に、恋していると。
ほっそりとした体を抱きしめてみたい。柔らかそうな唇にキスしてみたい。そして、決め細やかな肌に触れてみたい。
でも、それは到底かなえられそうにない。
だからせめて、ひとときでも傍にいたい、十代と同じ時間を共有したい。
その思いがヨハンを突き動かしていた。
ようやく部屋に辿りつき、ドアを開いた。
果たして、十代はもう来ていた。
「お待たせ、十代。遅れてごめん」
ソファに腰掛けていた十代が顔を上げる。その顔を見たヨハンはどきりとした。
なんだか、いつもより色っぽい。
わずかに頬が上気し、瞳がかすかに潤んでいる。ヨハンはドキドキしたが、ふと不安になった。もしや熱でも?だとしたら心配だ。
「十代、具合でも」
熱を測ろうと伸ばしたヨハンの手を十代が捕らえた。
「十代?」
「ヨハン・・・」
縋るような瞳。どうしたっていうんだ、何か不安なことでもあったのか?
「すきだ・・・」
い、今何て?
「ヨハンが好きだ。ずっと前から好きだった。男からこんなこと言われて気持ち悪いかもしれないけど」
十代にみなまで言わせず、ヨハンは十代の体を引き寄せると、ほっそりとした体をしっかりと抱きしめた。ずっと、夢みてきたように。
「ヨハン?」
「本気で言ってるのか」
「こんなこと、冗談で言えるもんか」
怒ったように言う十代の顔を両手で挟み、ヨハンは顔を近づける。十代の琥珀色の瞳がそっと閉じられた。
その唇に自分の唇を合わせる。思った以上に柔らかかった。
十代のわずかに開いた唇から、そっと舌を侵入させる。すると十代はぎこちないながらも自らも舌を絡めてきた。
甘い。
比喩ではなくほんとに甘い。たぶん砂糖菓子か何かの甘さが口に残ったままらしい。
その甘さも含め、ヨハンは十代の口中を十分に味わった。
ようやく唇を離す。
「十代、大好きだぜ」
耳元で囁くと十代の顔が赤く染まった。
「俺も、ずっと前からお前が好きだ。そして、ずっとお前が欲しかった」
「ヨハン」
「意味、わかる?」
十代はさらに顔を赤くして小さく頷き、ぎゅっとヨハンに抱きついた。
ヨハンは十代のジャケットを脱がせると、ベッドに導いた。
真っ赤になって震えている十代のTシャツを脱がせ、そっと手を十代の肌に滑らせてみる。
十代の肩がびくっと震えた。
「怖いか?」
「少し、でも」
「でも」
「嬉しい、勇気出してよかった」
「十代」
愛おしさがこみ上げ、ヨハンは十代に口付けた。
「愛してるぜ、十代」
「俺も」
二人はしっかりと抱き合った。
(あのキャンディ、本物だったんだ)
幸福感に酔いながら、十代は思っていた。

 


吹雪の部屋。
「うまくいったかな」
吹雪はもうひとつの「魔法のキャンディ」の箱を開けながら呟いた。
フランスに嫁いでいる彼の叔母は無論普通の人間である。
日本では珍しいフレーバーのキャンディは吹雪のお気に入りなので、定期的にフランスから送ってくれるのだ。
赤はクランベリー、ストロベリーよりも野趣のある風味が特徴だ。
「十代くん、魔法はね、恋するものなら誰でも使えるんだよ」
吹雪はくくっと笑うと、クランベリーのキャンディを口に入れた。

 

END

































綺麗に唄う曲の旋律は風の中に揺れてゆく。
ブランコの上に座りながら子供達は目を閉じ、静かに青年が弾く音色に耳を傾ける。
子守唄のようにメロディーは静かで柔らかく、まるで母親に抱きしめられているみたいに音色はあたたかく感じた。

やがて音楽は止まった。
「…みんな、そろそろ屋敷に戻ろうぜ」
弓をヴァイオリンから離れ、青年は眠るところの子供達に話す。
「えぇぇーもう終わりー?」
「僕、まだ十代お父さんのヴァイオリンを聞きたいぃー」
「もうちょっと聞きたいよ、お父さんー」
「また今度な」
不満そうに頬を膨らませる子供達に青年は思わずクスクスと笑い、小さく微笑う。
「代わりにアフターヌーン・ティーでも作ってやるよ。何が食いたい?」
「おう!僕、ホットケーキ!」
「わたし、イチゴケーキ!」
「十代お父さんの特製エビフライ・サンドイッチ!」
「って待て!最後のはおやつじゃないっつーの!」
「しかもなんでサンドイッチなんだ!オレはそんなサンド作ったことがないぜ?」
「だってヨハンお父さん、よく残りのエビフライをサンドにして食べるもん」
……。いいや、美味いは美味いけどさ…
頭を左右に振り、青年は子供達と共に屋敷に戻る。
何か懐かしいと感じながら、チラリと琥珀の瞳は小さく揺れるブランコを見た。

 

やさしい待ち時間

 

『わりぃ!十代!子供達を頼む!』
『…はい?』
屋敷の扉を開いて青髪の青年に気付いた瞬間に肩をつかまれ、
『子供達を頼む!』って言われたかと思うと彼はすぐに屋敷から去り、何もわからないまま呆れた十代はその場にとり残された。

子供達から話を聞けば急に仕事が入ってしまい、青髪の青年・ヨハンは数日間アメリカまで行かなければいけない事態になっていたらしい。
突然すぎてヨハンは子供達を知り合いに預けることができず、丁度困っている時に十代が帰ってきたため、ヨハンは彼に頼んだ。
十代は返事をしなかったが、子供達の面倒を見るのは嫌ではない。
ただ、少しだけ残念だと十代は思った。
(一言しか話さなかったな…ヨハンと)
ポットとコップを温めながら窓の外を見る。
真緑に見える草原と遠いところまで広がる蒼い天空。町と離れているため、周りにはこの屋敷しかないけど、何故か心は自然と落ち着く。
まるで大地と空に抱きしめられているようだ。
この景色を見るのは、何ヶ月ぶりだろう
(一年は…ない、よな)
ジュースやミルクティー、ホットケーキやイチゴケーキにサンドを一緒にテーブルに置くと子供達は喜ばしい笑顔を咲かせる。
「手は洗ったか?」
「「うん!」」
「ん。じゃあ食べて良いぜ」
「「いっただきまーす!!」」
早速食べ始める子供達。一口ほお張った瞬間、感動したように子供達は喜んだ。
「うまーい!流石十代おとうさん!」
「ヨハンお父さんのも美味しいけど、やっぱり十代お父さんの手作りは好きだわー!」
「ぼくも!」
「そうか、ありがとな」
子供達の笑顔で気持ちが満たされたのか、十代も嬉しく食べる子供達をみながら自分の飲み物を淹れ、向こうの椅子に座る。
丁度一口コーヒーを飲んだところだった。
「あ、十代おとうさんーぼく、ずっと聞きたかった事があったんだけどー」
「?なんだ、アレックス」
「どうしておかあさんはいないの?」
思わぬ言葉に十代は茶色い液体を噴き出すところだった。
なんとか咳きばらいをし、液体を喉に戻し、十代は子供を見る。
まっすぐ自分を見つめる瞳に何故か十代は少し複雑な気分だ。
「えっと、おかあさん?」
「うん!」
「おかあさんって…なんで?」
「どうしてここには十代お父さんとヨハンお父さんがいて、おかあさんはいないの?」
「えっと…オレ、結婚していないから、嫁さんはいないぜ?」
「えー?十代おとうさんは結婚しているでしょう?」
「…え?」
「だって、十代おとうさんのネックレスは指輪だって。結婚している人は指輪を付けるってシャーリーが言ってたよー」
「…シャーリー?」
「うん!わたし、前に本で読んだの!ねぇ?ピーター」
「うん!しかもヨハンお父さんも着けててるよねー」
「ねぇー……あぁ!」
突然、何かに気付いたように子供達は十代に振り返る。
「…ど、どうした?」
何故か妙な予感がする。
「十代お父さんはどんな人と結婚したの?」
「え?」
「ヨハンおとうさんが結婚した人は誰なの?もしかして十代お父さん?」
「馬鹿か、シャーリー!十代おとうさんは男だぞ!男と男は結婚できる訳がないだろ!」
「そういわれても、ヨハンお父さんはいつも十代お父さんの話しかしないもん。それに、十代お父さんもわたし達のお父さんでしょう?」
「それはそうだけど……だって十代おとうさんはおとうさんだろ?おかあさんじゃないよ」
「僕はおかあさんが居なくても十代お父さんとヨハンお父さんも好きだよ!アレックス、シャーリー」
「ピーター!話がちが…」
「なぁ」
落ち着いた大人の声に、三人の子供は顔をそちらに向けた。
十代は優しく微笑う。
「みんなはヨハンお父さんが好きか?」
「「うん!大好き!」」
「じゃあ、お母さんが欲しい?」
「「うーん…」」
少し考え込みながらシャーリーは先に答える。
「わたし、お母さんとお父さんがいないから…ヨハンお父さんはいるけど、お母さんも欲しいかも」
「僕も!」
「ぼくも!でも、お母さんが欲しいというより、ぼくはヨハンお父さんが好きな人と一緒にいて、幸せになって欲しい」
「…そうか」
ゆっくりと三人の頭を撫で、十代は優しい笑顔を咲かせた。
「オレも、ヨハンが幸せになって欲しい」
((……ぇ?))
「さぁ、早く食おうぜ」
「「…あ、はーい!」」
何故か、子供達は笑顔なはずのその表情から少し悲しみを感じた。


肩まで布団をかぶっていることを確認し、青年は小さなキスを眠る子供達の額に贈り、光を消して扉を閉める。
窓の外は夜に塗られた世界。
彼もそろそろ休もうと考えながら自分の部屋に戻る。が、手はドアノブで止まった。
「………。」
一歩下がり、彼は別のドアにたどり着き、ノブを回す。
開けたのはヨハンの部屋だった。
…少し、目を見開く。
いつも綺麗に片付いているはずの彼の部屋は嵐でも通りすぎたかのようにクローゼットは開け放たれ、服や中のモノも床にちらばっていた。
(本当に突然だったんだな…)
ふとヨハンが去る姿を思い出す。
まったく余裕がない彼の表情。きっと電話を受けた後彼はすぐに荷を作りながら子供達のことで迷っていたんだろう。
もし十代が帰ってこなかったら、きっとヨハンは困り果てていたに違いない。
(気紛れで帰ってよかったかも)
床の上にある本や荷物を片付け、服をクローゼットに戻す。
指で織物に触る。
(…ヨハンのにおいがする)
惜しみながら指先を放し、クローゼットを閉めて後ろのベッドへ振り返る。
しばらく見つめた後十代は静かにベッドに座り、体を後ろに向け、ベッドの上に臥せた。

…彼のにおいがする。
あの人はいないのに、彼のモノをみると懐かしくなる。
あの人はいないのに、彼が暮していた場所をみると恋しくなる。
自分はいつも気まぐれで出て戻って、それを繰り返してきた。彼は何も言わず、ただ自分に「お帰り」って言ってくれた。
だがそれは、いつまで続くだろう
シーツに埋もれるネックレスを見る。
いつか彼は女性と結婚し、温かい家庭を作るだろう。
例えその女性はヨハンとの間に子供ができなくても、今みたいに養子を取れば彼は理想の家族を作れる。
自分の存在を忘れて、…
『ヨハンお父さんも付けているよねー』
シャーリーの言葉を思い出す。
彼女はヨハンが指輪を着けていると言った。ヨハンは結婚という証を着けている。

『着けたくないならつけなくていいぜ』
彼は本当に優しい。
『着けたくなくても、これを持ってくればいいんだ』
いつも自分を想って守ってくれて、自分が傷付かないために彼はいつも一歩を下がりながら自分を見守ってくれた。
『でも十代。覚えててくれ』
そして、自分にあたたかい言葉をくれた。
『いつかきっと、お前に着けさせてやる。その時はまた誓おうぜ。俺もその日まで、指輪を着けないからな』
『…これ、プロポーズ?』
『あれ?違うか?』
『いいや。…うん、ありがとう。ヨハン』
「ヨハン」
指輪を取り出し、十代は見上げる。
静かな空間に指輪は闇夜に綺麗な銀色を描き、輝いている。
(いつかこれを手放さなければいけないだろう)
軽く握り込み、十代は布団を被る。
まるで主に抱きしめられているような錯覚に彼はゆっくりと目を閉じ、
『おやすみ、十代』
「…おやすみ」
指輪を胸に抱きながら眠りに落ちた。


「…――――っ…」
少し振り返る。
何かに呼ばれたような、誰かが呼んでいるような声が耳に届いた気がする。
懐かしくて、夢の中でずっと望んでいた声のようだ。
彼の、
「…気のせい、か…」
――――アイツがここにいる訳がない

思えば、十代と再会した時間は本当に一瞬だけだった。
突然の仕事に追いたてられ、子供がいることなどお構いなしにヨハンはすぐに海外に行かなければいけなくなり、彼は困った。
突然すぎでヨハンは子供達を知り合いに預けれないし、子供を連れていくのもある理由で無理だ。
両親もない、知り合いも近くにいないせいで彼はどうすればいいのかわからなくなった。
だが、不思議なタイミングで一人の青年は戻った。
彼は喜んだ。だがその喜びも仕事に追い詰められた中で、彼は青年に一言しか声をかけることができなかった。
…思い返すと、本当に酷い話だ。
(伝いたいことはあんな事じゃねぇのにな…)
ふと指の輪に触れる。
艶やかな銀色に輝く指輪を撫で、眩しそうにヨハンは目を細めた。
「…やっぱ俺の方がガキだ」


―――――こんな形でしか アイツを手に入れたという自信が持てない
…なぁ?十代

…―――ブルルルル…
「?」
聞き覚えがある音にヨハンはポケットから携帯を取り出す。
相手は知っている人だ。
少し頭を傾げながら、彼は受信ボタンを押した。
「もしもし?どうしたんだ?」
「『…………』」
だが反応が戻ってこない。
(?これは確かうちの番号のはず…)
もう一度確認すべく、ヨハンは続けた。
「もしもし?シャーリー?アレックス、ピーター?」
「『…………』」
やはり返事はない。暫く無言で考え込むと、何かを試すようにゆっくりと、
口を開いた。
「……、…じゅうだい?」
「『っ…』」
微かな反応は聞こえてくる。思わずヨハンは頬を緩める。
彼だ。
「どうしたんだ?そっちは深夜だろう?…いいや、答えたくないなら別にいいぜ。……十代の声を聞きたかったけど、まぁいいや」
「『………』」
「久しぶり、というべきだな?」
青髪の青年は微笑う。
「ちゃんとした会話もできなくて、悪かったよ。でも、十代のおかげで本当に助かった。…あのとき、俺は頼める知り合いもいなかったんだ」
「『………』」
「ありがとう、十代」
「『…っ、……』」
「―――…俺は、いいお父さんじゃなかったな。
子供達に寂しい思いをさせたくないのに、俺はいつも仕事に追われて、ちゃんとした時間に子供達と一緒に居られなくて、彼らに嫌な思いをさせちまって、…そして」

「愛する者と話す機会も無くしちゃった」
「『…………。』」
「……電話で、聞くことじゃないってわかっているが…十代」
手のひらを見て、ヨハンは口を開いた。
「俺の言葉はちゃんと、お前の心に届いているか?」
…ずっと、怖かったのかもしれない。
確かに彼はこの人を想っていて、一生…いや、心が無くなる瞬間まで彼はこの人を想う自信がある。
……でも、
この人は?
「本当は、お前に話す大切な事があるんだ。とっても大事な、大切なこと。だから、」
逃げるなよ?
「『っ…!』」
(俺が戻った時に他のところへ行かないでくれ)
まるでそう聞こえた言葉だ。
「じゃあ、そろそろ切るよ。また後で。」

まるで目の前に立っているように。
遠く離れていても向こうの彼は前に居るように見え、わからなくても彼は驚いていると感じ、青年は安らかに微笑んだ。
「おやすみ」


『おやすみ』。
…あぁ。まるで眠る前に聞こえた幻のようだ。
でも、何故だろう?
すごく、…
うれしい。
「…うぅ…っ」
(あぁ、だめだ。子供たちに聞こえてしまう)
そう思いながら雨の雫はただひとつ、ひとつ降り続いて、とまらなくて。
でもうれしくて。
「バカだ。…本当にバカだぁ……っ」

あぁ。待ってやるよ
ここで。この家で。
この優しい時間の中で、子供達と一緒に待っているよ

お前の帰途を

 


ゆっくりと扉は開いていく。
ベッドの上に眠る青年を見てニコッと笑い、起こさないように近づく。
荷物を床に置き、ベッドに腰掛けながら手を伸ばす。
以前と変わらない、柔らかい鳶色の髪だ。
暑かったんだろうか、布団の下の上半身は服を着てない。
思わずクスッと青髪の青年は笑った。
(誘っている…んじゃないだろうな?…たぶん)
試しに肩を触る。
自分と違う温度が肌に伝わるため、体はヒクと跳ねる。
でも、顔は穏やかに眠るままだ。
「…じゅうだい」
静かに布団を取り上げ、華奢な肩に優しく撫でる。
まるで何かを探しているように。
(……あぁ。よかった)
(旅の傷とか、なかった)
愛しげに、青年は肌に口付けを捧げた。

少しずつと眠る子は目覚めた。
「…なんだよ…」
「おかえりとか言わないのかよ。ひでぇ」
「自分だって言ってねぇくせに、なんでオレが…」
「俺が聞きたいに決まってんじゃん」
「じゃあそのまえにこれを受けてよ」
後ろを見ろと十代が指し、ヨハンは何事かと振り返り、
「「ダイレクト・アタ――ック!!」」
…見事に子供達に攻撃された。
「な、…なにやってんだお前ら!」
「やったぁー!ヨハンお父さんにアタック成功!」
「「やったぞー!」」
「偉いぞ、みんな!明日はご馳走だ!」
「「十代おとうさんのおかげだよ!ありがとー!」」
「俺の話を聞けぇー!って十代!お前なぁ!」
「オレを泣かせた罰だ」
服を引っ張り、十代はヨハンを近づけると、彼の額と寄せ合う。
「でも、嬉しかったぜ。ヨハン」
「じゅうだ、」
「すごく、うれしい」
緩やかにヨハンの肩に寄せ、十代は云う。
「聞かせて、くれないか」
―――オレに話したい、大切で大事なこと
「……。…」
チラッと隣の子供達を見て、ヨハンの視線に気付いた彼らは微笑を浮かべた。
「いいのか?」
「だって私たち、十代お父さんでいいー」
「おかあさんより十代おとうさんがいい」
「うん!十代おとうさんの料理は大好きだ」
そんな理由か!?
子供っていいな…と思わず子供の素直さに溜め息をつき、十代の首に手を伸ばす。
傷付かない様、ネックレスを外しながら指輪を取り出す。
指は震えている。
「…――――」
暖かくて涼しい指は自分のと重なる。
…彼も震えている。

あぁ、そうか
俺達は、同じことを思っているんだ

時を刻んでいるように。緩やかに、静かに指輪を指の奥まで向かせ、手を取り上げる。
そして、
指輪に口付けを捧ぐ。

―――お前は俺だけのモノ、俺はお前だけのモノ

少しだけ、顔は赤くて暑い。
二人は小さな笑顔をあげた。

 

俺と、結婚してくれ
 ―――…うん

Fin. 


 





 
校正:ペンコ
















・恥らう君のために









震える十代を後ろから抱きしめながら、ヨハンは十代の耳元で囁いた。

「なぁ、こっち向けよ。」

「…っ。」

十代からの応答は無い。
だが、顔を赤くしてさらに震えるのが分かったから、ヨハンはそれで満足だった。
かろうじて身に纏っている服をゆっくりと脱がせていけば、ヨハンの眼前には赤く染まった肌が晒される。

「ああ。こんなに真っ赤になっちゃって。」

口付けを落としてやれば、十代は枕に顔を埋めてしまう。
抵抗もせず脱がされているというのに、随分な反応だ。
自分の方を向いて欲しいヨハンは、更なる刺激を与える事にした。服を肌蹴たところを舌でなぞり、すでに脱がせ終わっている下肢に手を伸ばす。
十代自身が零した蜜で指先を濡らすと、十代の秘された場所へ遠慮なく指を突き入れた。

「ひぅっ。」

「ん。いい声。」

下半身に響く音色に、ヨハンは満たされるのを感じた。
だが、それは精神的なことであって、肉体はちっとも満たされていない。
十代のそこを手早く慣らすと、ヨハンは自身をそこに埋め込む。

「こっちも最高だぜ。」

何度もヨハンを受け入れてきたそこは、奥へ奥へとヨハンを招き入れる。その厭らしさに顔をニヤつかせながら、ヨハンは律動を開始した。

「ぁっ。んっ。…ぁんっ。」

あくまでも一生懸命声を押し殺そうとする十代。
全身をベッドに埋めて快楽に耐える姿は、非常に愛らしくて嗜虐心をそそられる。
ヨハンは己の欲求のままに十代に欲をぶつけていった。

「ここ…とかさ。好きだろ?な?」

「よは…だめ…だめぇっ…っ。」

ふるふると首を振る十代の頬が上気しているのが見えた。背中越しで確認できないが、きっと恍惚とした表情をしているだろう。
十代が恥ずかしがらなければ表情を楽しみながらできるのに…、とヨハンは思う。
十代の表情を快楽へと変換しながら事に及べるのは、十代の理性が飛んでからだった。快楽に落ちていく十代の表情を、ヨハンは見られない。
以前、無理矢理自分の方を向かせたら、緊張のあまり身体が強張ってしまった。
その時の泣きそうな十代の表情も非常にそそられるものだったのだが、十代の機嫌を損ねてしまうのはいただけない。
ヨハンは、お互い気持ち良くなれる方が好きなのだ。

「なぁ。早く俺に堕ちて。もっと気持ちよくなろう。」

覆いかぶさってそう言えば、十代の脇に置いていた手に、十代の手が重ねられた。
おや?と思って十代を伺っていれば、おずおずと十代の顔がヨハンへ向けられる。
といっても顔半分だけなのだが、真っ赤な顔のまま潤んだ目で見つめられて、ヨハンの欲望は膨張した。

「あっ。」

ヨハンの変化を感じ取った十代は頭を枕に埋めてしまう。
だが、顔の向きはそのままだ。
ヨハンには十代の表情がよく見える。
それは、十代の準備ができた事を示していた。

「じゃあ。本番行こうか。」

重ねられた手を握り返すと、ヨハンは十代の身体をゆっくりと反転させた。
融け切った表情を笑みで迎えると、誘うように開かれた唇に唇を合わせる。
堪えきれないと言わんばかりに吸い付いてくる十代を可愛いと思いながら、ヨハンは行為に没頭していった。

 

END
 



 











十代は、ただいま昼寝中である。
窓を全開にした部屋には心地良い風が入り込み、夏の気温で上昇した体温を冷ましてくれる。
汗ばんだ肌に風が当たるのは、とても心地がよかった。
十代は上半身裸で、惰眠を貪り続ける。
精霊達がたまに騒いでいたが、十代は意識を覚醒させる事なくうつらうつらしていた。

(ん…?ハネクリボー?)

モサモサとした感触が肌に当たっていた。
ハネクリボーと思われる感触は、十代の背中やうなじ辺りを触れながら移動し続けている。
くすぐったくて身をよじるが、ハネクリボーは構って欲しいのか、いつまでも離れない。

(あ〜もう…俺は眠いんだよ……。)

あまりにもしつこいので、十代は眠りながら手で追い払う。
しかし、ハネクリボーは諦めなかった。
背中に乗っかって来たかと思えば、触れる部分を増やしてくる。
そこまでされて、十代はようやく何かおかしいと気付いた。

(ハネクリボー……じゃ、ない?………ってか、ありえない!!!)

異世界ならともかく、この世界で十代に触れる事は不可能だ。
慌てて身体を起こせば、目を真ん丸くするヨハンがいた。

「なんだ。残念。」

「何がだよ。それに何してたんだよ。」

ヨハンは十代に好意を持ってくれている。だから、危害を加えられる事は無いのだが、好意を持たれているがゆえに、十代は警戒する必要があった。

「何してたって……ちょっと跡を付けてただけ。」

「跡?」

「キスマークってやつ。あ〜あ。十代が起きなければ、もっと付けられたのにな。十代の肌って……」

ヨハンはまだ何か話し続けていたが、十代は聞いちゃいなかった。
試験の時よりも必死になって、自分の身体をチェックする。
二の腕、脇腹、太腿…。
自分では見ることが出来ないが、首や背中にもついているだろう。
十代の肌には、夏だというのに桜が舞っていた。

「ヨハン…おまえな…。」

拳を握って声を震わせれば、ヨハンは嬉しそうに微笑む。

「綺麗についてるだろ?いやぁ、こんなに感動してくれるとは思わなかったよ。」

「誰が感動してるって?」

「照れるなよ。可愛いだけだぜ。あ、鎖骨にも付けさせてくれよ。」

ヨハンは、十代の意思などお構いなしに押し倒してきた。

「離れろ馬鹿。」

「ああ。俺は十代馬鹿だぜ。ん…やっぱ十代の肌って気持ちイイ…。」

かじられて、舐められて、吸われて、あっという間に十代の肌には印がついていく。

「おいヨハン。いい加減にしろよ。」

「やだね。それはこっちの台詞だ。」

「はぁ?」

ヨハンの思考は理解不能だ。ヨハンを理解できるのは、デュエルでタッグを組んだ時くらいだ。
ヨハンの頭を押しのけながら、十代は逃れようともがく。何とか振り払って俯せになるが、ヨハンはしつこかった。

「重い。どけ。」

身長はさほど変わらないが、ヨハンは十代よりも筋肉がついていて重いのだ。細身の十代には辛いものがある。

「やだよ。……なぁ、十代。諦めろって。」

「ちょっ…やめろっ。」

ヨハンはいきなりエロい声を出して来た。
しかも耳元で囁くとか卑怯すぎる。
だが、十代の拒絶など知ったことではないと言わんばかりに、ヨハンは身体を密着させて囁きを続行した。

「嫌じゃないくせに。俺に触られるの好きだろ?」

「好きじゃない。触るな。退け。」

「分かった分かった。絶対放さないから、安心しろよ。」

ヨハンはそう言うと、後ろからギュッと抱きしめてくる。

「…暑い。」

「そうだな。」

ただでさえ暑いのに、密着するなんて馬鹿みたいだ。

「俺は眠いんだよ。」

「じゃあ、俺もここで寝る。」

狭いベッドでわざわざ二人で寝る?愚か過ぎる行為だ。
ヨハンの愚行を止めたくて、十代はヨハンの腕の中で振り返った。
だが、文句は十代の口から出る前にヨハンによって止められた。

「…ん……。」

気付いたら、十代はヨハンに腕枕されて眠る体勢になっていた。
ヨハンの幸せそうな顔を見ていたら、わざわざ抗議するのも面倒になってくる。

「腕…痺れるぜ。」

「大丈夫だって。俺鍛えてるし。」

「………。筋肉馬鹿。」

「ははっ。ひっでぇ。」

「揺するな。枕なら枕らしく大人しくしてろ。」

「はいはい。仰せのままに。」

ヨハンがあまりにも嬉しそうでムカついた十代は、ヨハンを抱き枕にして爆睡してやった。

 


十代の気が晴れるのは、昼寝から目覚めて、ヨハンが情けない顔で腰を引いている姿を見てからだった。


 

 

END






 


 

 

 

 

 


ヨハンの恋人は極度の恥ずかしがりやだ。
キスをする事はもちろん、距離を詰める事すら困難である。
それは、他人の視線があろうとなかろうと同じだった。

「なぁ、十代。こっち来いよ。」

「お断りだ。」

十代は本当につれない。
せっかくヨハンが遊びに来たというのに、十代は近寄ろうとしなかった。
ちなみに、ヨハンから強引に近付いたら、手加減無しで殴られてさらにその日中避けられる。
既に経験済みだ。
十代はヨハンの方を見ようともせず、狭いベッドの上で悠々と雑誌を読んでいる。ヨハンは床の上。ベッドの足元の方だ。
十代の死角だから近寄り放題なのだが、ちょっと虚しい。

「なぁ十代〜。」

「うるさいぞ。俺は今、雑誌読んでるんだよ。おとなしくしてろ。」

「え〜。」

雑誌を読んでいると言っても、十代は眠そうだ。
このままでは寝る事間違いない。

「なぁ、寝るなって。」

「寝てな……ぁふっ。」

あくびをしながら言われても説得力皆無だ。

「恋人を放置するなよ。」

「……黙ってろ。」

ドスが効いた声で言われて、ヨハンは黙るしかなかった。
恋人ということを否定されなかっただけマシだが、こっそりため息をつく。
ヨハンはもっと触れ合いたかった。
触れ合って、絡み合って、溶け合いたい。
キスすらなかなかさせて貰えないのに、そんな事が出来るとも思えないが、ヨハンは諦めていなかった。
そんなヨハンの思いを余所に、十代の気配は静かなものになっている。

「ん?十代?寝たのか?」

ヨハンの呼び掛けに応じたのは、十代の気持ち良さそうな寝息だった。警戒心が強い十代がこうして眠るのはヨハンの前だけだ。寝顔も安心しきっている。
それはそれでちょっと複雑な気分になるのだが、それを確かめてから、ヨハンは立ち上がった。
いつもだったら、ヨハンもふて寝をするところだけれど、今日はある事を試そうと思っている。
十代は怒るかもしれない。だが、ヨハンの事を愛してくれているなら、許してくれる筈だ。
ヨハンは気合いを入れると、十代の眠るベッドへ上がった。

 


「十代。服が皺になるぞ。」

「む〜。」

よほど眠いのだろう。
十代は目を閉じたまま、もぞもぞと服を脱ぎ始めた。

「ほら、手伝ってやるよ。」

そういいながら、ヨハンはドキドキしていた。いつ十代の意識が覚醒してしまうかわからない。
だが、これからの事を思うとやめられない。
うまく脱げない十代に手を貸してやり、赤いジャケットを脱がす。

「ん〜…。」

「ほら、まだだぜ。」

ヨハンがインナーを引っ張って促せば、寝ぼけている十代は、インナーにも手を伸ばす。

「そう。いい子だ。」

唾を飲み込みながら、ヨハンは手伝った。次第にあらわになる肌に興奮が隠せない。

「…むぅ。」

インナーも脱ぎ終わり、満足そうに眠りに落ちようとする十代。そんな十代に、ヨハンは声を掛けた。

「下も脱げよ。苦しいだろ?」

細身のパンツは寝るのに向かない。ヨハンに言われるがままに自らベルトを外し、十代はずりずりと脱いでいく。
これはもう、興奮するなと言う方が無理だ。どさくさに紛れて下着ごと脱がせれば、十代は生まれたままの姿になった。
目の前にあるのは、惜しげもなく晒された十代の身体。

「うわぁ。」

自分で脱がせたというのに、ヨハンは思わず目を泳がせた。
だが、見ないのは勿体ないと言わんばかりに、すぐに視線を戻す。

「何だよこの細さ。女みてえ。う…やべっ。」

ヨハンの若い身体は、愛しい人の裸体に素直に反応する。

「一回抜いとくか?あ、いや、でも…………よし。」

ヨハンが抜いてる間に十代に目覚められたら、二度とこのようなチャンスは来ないだろう。同じ轍を踏むほど十代は馬鹿じゃない。
ならば、危険を冒してでも、ヨハンは突き進むべきだ。
痛いほど張り詰めてきたそれを無視しながら、ヨハンもゆっくりとジャケットを脱ぐ。そして、十代の肌へとそっと手を滑らせた。

「いい感触。」

女のように柔らかいわけではない。だが、張りのある肌と、程よく引き締まった身体はヨハンを楽しませてくれる。
掻き抱きたい衝動に駆られながらも、ヨハンはゆっくりと十代の身体を撫で続けた。

「十代の感じるところはどこ?」

応えるとも思っていないが、ヨハンはそう問いかけた。
ゆっくりと手を滑らせ、十代を堪能していく。一方的な行為で、恋人同士であろうと犯罪か?などと思うが、ヨハンは十代に触れ続けた。

「ん…。」

十代が声を漏らし、ヨハンは思わず手を止める。

「…十代?」

恐る恐る問いかけたヨハンに返されたのは、十代の悩ましげな声だった。

「ぁ…。ん…ぅ…。」

体重をかけ過ぎないよう気をつけて、ヨハンは十代の全身を味わった。
服ごしだが、十分気持ちがいい。
だが、流石に何かおかしいと思ったのだろう。十代は目覚めてしまった。
身体を起こそうとするのに合わせて身体を離せば、十代は寝ぼけながら自分の様子を確かめ始める。ヨハンはそれを黙って見つめていた。
怒られる覚悟はあるが、期待もしている。固唾を飲んで十代を見ていれば、ヨハンの目の前で十代の全身は真っ赤になっていった。
十代はヨハンには目もくれず、手近にあったジャケットを手早く羽織ると、ベッドに突っ伏した。 それだけだった。
罵声はなくとも、拳か足は来るだろうと思っていたので拍子抜けだ。

「十代?」

「……っ。」

魅力的な姿で横たわる十代を見て、ヨハンは心底困った。頭隠して尻隠さず…ならぬ、上半身隠して下半身隠さずだ。

「十代。まる見え。」

十代は、ヨハンの忠告に答える余裕もないのだろう。ジャケットを握りしめ、身体をベッドに押し付けたまま、ピクリとも動かない。

「なぁ十代。どうして裸になってるのかって、聞かないのか?」

覆いかぶさって、剥き出しの下半身を楽しみながらそう言えば、十代はふるふると首を振る。
抵抗が無いのをいいことに、ヨハンは調子に乗ることにした。滅多に無いチャンスを棒に振る必要はない。
再度覆いかぶさり、十代をギュッと抱き締めると、ヨハンは耳元で囁く。

「十代の身体って気持ちいいな。すげぇ興奮する。」

「ぁ…って、る。」

「なぁに?十代。」

「あた…ってる。お前の…。」

「そりゃあな。十代に触れてるんだぜ?反応して当然だよ。」

「……っ。」

ヨハンは痛いくらいに張り詰めたそれを取り出して、十代の双丘に押し付けた。
割れ目の間を往復させれば、ヨハンの先端から滲み出たものが十代の双丘を濡らし始める。
滑りが良くなったのをいいことに、ヨハンは十代の感触を楽しんだ。

「やべっ。ハマりそう。」

十代の中に入り込まなくても十分気持ちがいい。
ヒクヒクしている入口に指を添えながら、ヨハンは行為に没頭した。

 


どれくらいそれを繰り返していたか。
気付けば、ヨハンの指は十代の中に限界まで埋め込まれ、十代の自身もヨハンの手の中で育っている。
そして、十代の口からは、あられもない嬌声しか発せられなくなっていた。

「十代。気持ちいい?」

「あ…ん…もっと…お願ぃ……。もっと…ぉ…。」

ぐるりと中を掻き交ぜてやれば、十代の先端からはとろりと蜜が零れる。
それを自分のものになすりつけて一緒に扱き上げれば、十代の身体はしなやかに反り返った。

「なぁ。十代。」

「…?」

「十代の中…入りたい。」

十代の痴態で十分イけるが、ヨハンは十代の中で果てたかった。そして、十代を自身でイかせたい。
十代は不思議そうな顔をしたが、理解出来たのか身体を震わせ始める。
中で刺激していたヨハンの指を締め付け、期待するかのように蜜を溢れさせるのを見て、ヨハンは指を引き抜いた。

「力抜いて。俺に任せて。」

十代を仰向けにしてすらりとした足を抱えれば、十代は真っ赤に染まる。
我慢は出来なかった。
最低限の気遣いだけして、ヨハンは十代を襲った。
絡み付いてくる十代の内壁を掻き分け、何度も出入りしながら奥へと突き進む。十分過ぎる程に解したからか、十代は恍惚とした表情を浮かべるだけだった。

「十代。俺が分かる?十代の中を暴れまわってる。気持ちが良くて、またデカくなったぜ。なあ、感じる?」

「ん。よは……おっき…。いっぱい…。」

「ああ。いっぱいだ。俺のをくわえ込んで放さない。」

「よは…ん…は?きも…ち…ぃ?」

必死に手を伸ばしながらそう問われ、ヨハンは危うく暴発するところだった。暴発したところで、また育つのは目に見えているが、やはりイかせてからイきたいものだ。
無自覚で煽ってくる十代を組み伏すと、ヨハンは本格的に律動を開始した。
襲い来る快楽の波に耐えながら、ヨハンは十代を満たしていった。
肌がぶつかる音が部屋に響き、互いの荒い息遣いがその合間を埋める。
騒がしい音の中で、ヨハンと十代は絶頂を迎えた。

 


「馬鹿ヨハン。節操なし。絶倫。」

目覚めて第一声がそれだった。
あまりにも可愛げのない言葉に、後ろめたさがあったヨハンも、流石にむっとする。

「そんなに怒るなよな。気持ちよかっただろ?」

「そういう問題じゃない。」

「嫌じゃなかったくせに。」

「なっ、おまっ。」

思い出させるように肌を撫でれば、十代はおもしろいくらい大人しくなった。
真っ赤になって身体を震わせる姿は、非常にそそる。

「絶倫って言ったよな。実行しようか?」

「いい。しなくていい。もう無理。」

慌てて布団の中に逃げ込む十代を引きずり出しながら、ヨハンは耳元で囁いた。

「またシような。次はもっと愛してやるよ。」

じたばたと暴れる十代を抱きしめて、ヨハンは笑った。

 

END






 






















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