inserted by FC2 system



● 突く勇気はあるくせに告白は無理か。

(小学生設定:R-18)
written by ペンコ





「お前、名前は?」
「…………遊城、十代だけど」

 

違うクラスだったヨハンと喋ったのはそれが初めてだった。
突然名前を聞かれて、十代が名前を答えるとヨハンはしばらく考え込んで、何も言わないままその場を去った。

ヘンな奴。
十代が抱いた最初の印象はその程度だった。

 


「3組のヨハンてさー、4組の××とつきあってんだって」

次にヨハンの名前を聞いたのは友達と野球をするために集まった川原だった。
それぞれ野球道具を持ち寄り、チーム分けをする前、誰かがそんな話を振った。

「うわっ、××って4組で一番いけてんじゃん!」
「ヨハンのやつ許せねーっちょっと顔がいいからってよー」
「あいつ中学生とツルんでるって噂だぜ」

それは十代も知っていた。
ゲームセンターで年上のグループの中にヨハンがいるのを見かけたことがある。

「で、あいつ××とキスまでいったって噂」
「ええええ〜〜〜!?マジかよ〜〜〜〜〜!」

中学年まではみんなゲームや野球、サッカーと遊ぶことに夢中だったのに
高学年に上がるにつれちょくちょく挟まってくるようになった恋愛話。
しかも同級生の噂話ともなれば一気にヒートアップして盛り上がる。
早く野球がしたい十代は「またか」とウンザリしながらも、みんなの興奮に乗っかろうと一緒に身を乗り出した。

「この前まで違うやつとつき合ってただろ?」
「いやそれは先週くらいに別れて、××が本命だって女子が言ってた」
「ヨハンてモテるよなぁ〜体育もできるし頭もいいし…くそっ」
「あいつ絶対やってるよ」
「やってるって……アレか?」
「ああ。アレだ」
「まさか〜」

野球場のホームベースを囲んで少年達は誰に聞かれるわけでもないのに声をひそめ、ごくりと唾を飲んだ。

「………あれって?」
みんなが指し示す「あれ」の意味がわからなくて、十代は聞いてみる。
「バッカあれだよあれ!」
「遊城はまだ子供だなぁ〜」
ニヤニヤとなぜか勝ち誇ったような友達に十代はムっとした。
「アレってなんだよ!教えろよー!」
「わっ大声出すなよ!」
癇癪を起こした十代はすぐに押さえ込まれる。
「アレっていったらアレだよ……その…エッチだ」
「わ〜〜〜っ!お前よく口にできるな!」
友達が口にしたその単語にみんながひやーっとおののく、
が、十代はそれを聞いてもいまいちピンとこなくて首をかしげた。
「エッチって…?具体的に何するんだ…?」
十代の疑問に周りがうっ、と口ごもる。

「エッチっていやぁ……その…なんだ?あれだ。男と女が裸になることだ」
「それは違うぜ。おっぱい触ることだろ」
「えー?一緒の布団で寝ることだろ?そしたら赤ちゃんができる。母ちゃんが見てたドラマでやってたぞ」
口々に自論を展開するも、どれもこれも自信がないようだ。
「…………よーするにお前らもわかってねーんじゃん」
くだらねーと十代が言い捨ててその場から離れると、図星をつかれたメンバーも各々ポジションにつきやっと野球が始まったのだった。


「遊城!そっちいったぞーーーー!!」
「まわれまわれーーーっ」

打ち上げられた特大ホームランに、外野を守っていた十代はミットを振りながら白球を追った。
少ないメンバーで無理矢理対戦しているので、なんせ守備範囲が広い。
もはや整地されていない草むらでやっとボールを見つけ、すぐバックホームしようと十代が振りかぶった時だった。

「……………もしかして、これ…」

視界の隅に入った、無造作に捨てられた雑誌。
よくは見なくてもなんとなく雰囲気でわかった。
こういうところに突然捨てられているものといえば「そういう」雑誌と相場が決まっている。

「何してんだ、早くバックホーム!!」
急かされて我に返り、すぐにボールを投げると走ってもどったが、十代は一瞬にしてその場所を記憶した。
肌色が多めなそのページにドキドキしながら、また後で来ようと心に決めて。
見ればエッチとは何なのか、わかるかもしれないし。

好き勝手にやっていた野球が18回の裏のスリーアウトをカウントしたときだった。
「おーい駄菓子屋行かねぇ?」
「あ、行く行くー駅前のおもちゃ屋も行こうぜ」
飽きるまでやれば次の提案でみんなの興味は移り、野球道具を自転車のカゴに入れると集団は移動を開始した。

「遊城も行こうぜーカード好きだろ?」
「あっ、え、っと…俺は今日はもう帰る。金ねーし」
嘘をつくのが下手なりに取り繕い、じゃあしょうがないなとクラスメイトたちはすんなり帰ってくれて、十代はほっと息をついた。

さて。ここからが大事だ。
十代はきょろきょろと周りを警戒しながら、さっきの場所を探す。
草むらはどこも似たような感じだから、高速で目に焼き付けた遠くの電柱や景色を目印に
十代は逸る気持ちを抑えてさっき見つけたものを探した。

「あった……!」

しゃがみこんで、まじまじと見る。
多少破れているところがあるものの、捨てられたばかりなのかキレイな状態だった。
ページには裸の女の人。
自分の母親を始め、連れられて入った銭湯の女湯なんかで女の人の体がどうかなんてくらいは知っている。
なのになにかが違う。
妖艶な表情でベッドに寝そべり大股を開く女優が出す性的なアプローチに、十代はどぎまぎした。
見てはいけないものを見ているような、背徳感。

同級生よりも先にエッチとは何なのか知りたい。優越感に浸りたい。
そんな思いで別のページも見ようと思った時だった。
たしかエッチとは男と女が二人でするものなはずだ。
汚いとは思わなかったが、なんとなく触るのがはばかられてページの端をつまんでみる。

「遊城!遊城だろー!?」

突然大声で名前を呼ばれて十代は驚いて飛び上がってしまいそうだった。
振り返ると、橋の上に人がいる。
目立つ蒼い髪を日に透かして笑顔で呼びかけるその人物は、さっき話題に出たばかりヨハンだった。

ヨハンは十代だと確信すると、橋を渡って土手に降りてこようとする。
十代は焦った。
よりによってこんな時に……よく知らない奴にエロ本見てるところがバレるなんて…
なんとか回避しなければ。

不自然にならないよう、なんとかその場からヨハンに駆け寄る形で離れることができた。
が、まだまだヨハンの視界を考えると見つけられてもおかしくない。
内心ヒヤヒヤしながら十代は作り笑いでヨハンに過剰な愛想を振った。

「よ、よぉー」
「橋の上からでも遊城ってわかったぜ」

なぜか誇らしげな彼が笑ってみせると、街で見かけた時よりずっと子供っぽくて十代はなんだか安心した。
よかった。そんなに怖い奴じゃなさそう。

「……この前さ、あれからどうだった?」
「…どうだった、って?」
「大会」
「ああ。あの後は勝ったけど…俺は2位。決勝で負けちまった。ロック決められちまってよー」

十代がヨハンと初めて言葉を交わしたのは駅前のゲーム屋の小さなデュエル大会だった。
最初は気付かなかったが勝者が絞られるにつれ、ヨハンがいることに気付いた。
外国人であること以外でも何かと目立つヨハンのことを学年で知らない生徒はいなかったが、
それでもこっちから話しかけるほどではない。
勝ち残れば当たるかなと十代が思ったのはそれくらいだったが、ヨハンに名前を聞かれて十代はびっくりした。
そしてヨハンはその後デュエルを棄権して帰ってしまったのだ。
自分が何かしたのかと心配になったが、名前を聞かれただけで思い当たる節もない。

「なんだよー負けたのか。遊城なら優勝できるって思ったのに」
根拠のない言葉だったが、言われて悪い気はしない。
十代は嬉しいような気恥ずかしいような気分になって照れ笑いした。
「お前も残ってれば、決勝で対戦したかもな」
「へへ、まーな。今度決闘しようぜ」
「おお!もちろんだぜ」
クラスの奴らはヨハンのこんな一面を知ってるのだろうか。カードが好きなのはみんなと変わらない。
この前の大会の結果が気になってこんなところまで降りてきたのかな、と十代が思ったときだった。

「こんなところで何してたんだ…?」
会話が落ち着いて改めてやって来た質問に十代はギク、と後退る。
「え、えーっと、野球の、れ、練習…」
嘘じゃないよと自転車にあるバッドを指差してみるが、無意識に見られたくないものを隠すように立っていたせいか
異常に鋭いヨハンは十代の向こうを覗き込むように伸びそれを確認すると、納得したように頷いた。

「あー。エロ本か。遊城の?」
「違うー!」
「ハハ、ムキになんなって」
ヨハンは十代が友達に嘘をついてまで内緒にしたその代物を、なんでもないものかのようにケラケラと笑った。

「で、よかった?」
「いや、今から見ようとしてたとこ…」
隠しても仕方がないと観念した十代は正直に話した。
「あそっか。そりゃー悪かったな」
余裕のヨハンに十代は友達の噂を思い出す。
慣れた様子のヨハンならひょっとしたらエッチの意味を知ってるかもしれない。

「でもさーそんなんでいいわけ?」
「……そんなん、って?」
「俺ん家さ、にーちゃんのAVいっぱいあるんだぜ」
「…………えーぶい?」
「アダルトビデオってこと!ってお前そんなんも知らないのかよー」
呆れるヨハンに十代はムっとした。さっきからこう同級生に遅れをとっているようで面白くない。

「写真よりビデオの方が興奮するぜ?」
「ふーん……そうなのか」
ヨハンの言葉を理解しないながらも、十代は興味津々だ。
「にーちゃんバイトでいないし……見にくるか?」
「えっ、いいのか?」
「ああ。俺もよく見るしー。かきっこしようぜ」
「書く…?何を?」
「マスを」
「枡…?」
「ああーもう!説明するより実際見たほうが早ぇーな。俺ん家行こうぜ」
そう言ってヨハンは勝手に十代の自転車の荷台にまたがる。

一人で決めていくヨハンに呆気にとられながらも、十代は自転車をこぎ、
ヨハンが案内するまま彼の家に向かった。

 

* * *


「おじゃましまーす」
広い玄関に十代の声が響く。
ヨハンの家は一般的な一戸建てで、1階は駐車場、階段を上がった2階が入り口だ。
「母さんも仕事でいないし、気ぃ使わなくていいぜ」
飲み物を取ってくるからと先にヨハンの部屋に行っているように促された十代は、
階段を上がって、ヨハンの部屋らしき扉を開ける。
初めて来る友達の家の慣れない匂いに、少しの緊張と、理由のないワクワク感。
「うわ…すげー」
読みたかったマンガに、ねだっても買ってもらえなかった人気のゲーム。
見たこともないおもちゃがきれいに整頓されていて、十代は目を輝かせた。

「適当なとこに座ってくれ。あ、テレビに近い方がいっか」
缶ジュースに袋菓子をかかえたヨハンが入って来ておもむろにテレビをつける。
「なーこのゲームさ…」
「どんなやつが見たい?にーちゃんの部屋から何個かパクってきた」
そう言ってヨハンが見せたいくつかのDVDに十代は本来の目的を思い出した。
今ははっきり言ってゲームの方に興味が移りつつあるがヨハンの手前言い出せず、一応食いついてみる。
「うーーん……よくわかんねーな。どれも同じに見える」
「かわいいと思う女の子のでいいんじゃね?」
「……………どれがかわいいんだ?」
パッケージの女の人はみんな裸だったりコスチュームを着ていたりするが
何を基準に選べばよいのか十代は全然ピンとこなかった。
「そんなの俺が知るかよ。ま、てきとーにコレでいいんじゃないか?」
「うん、それでいい」
そう言って無作為に選んだ一枚を、ヨハンがプレーヤーに入れる。
「自分の部屋にテレビがあるっていいな。俺なんてリビングだからさ、ゲームしていい時間も決められてるし」
「まーなー。親あんまいないからリビングにいかないし。あ、ほら、ティッシュ」
投げられた長方形の箱を見て用途がわからず十代は首をかしげる。
「…………?」
「んじゃ再生するぜー」
ヨハンはベッドの上に上がってリラックスしたようにリモコンを操作した。
テレビの向かいに置かれたベッドに十代はもたれ、体育座りをして画面を見つめた。
横にはティッシュの箱。
一体どんなものなのか…十代はごくりと唾を飲んだ。

 

「………………………………………………………………」

十代の目に飛び込んで来たものは想像を絶する光景だった。
絡み合うように男女がくんずほぐれつ、一心不乱に行為に没頭し奇声に似た叫び声を上げている。
「………こ、これ、なに……?」
十代は不安になってヨハンの方に振り返ってみると、ヨハンは平然とポテトチップをほおばっている。
「なにって、セックスだろ」
「え、エッチじゃないのか?」
「まぁそうとも言う」
「…???」
画面に映る女優は恍惚とした表情を浮かべ、男から差し込まれたものに喜んで腰を振っていた。

「どうだ?興奮する?」
「うう……、よくわかんねー。でも、なんか…変…ト、トイレ貸して」
「………遊城、それはトイレじゃなくて」
十代は初めての感覚に慣れず、ふるふると震えながら内股を擦り合わせた。
それを見たヨハンは菓子を食べる手を止め、するすると十代の横に腰を下ろした。
「ど、どうしよう…漏れる、トイレどこ」
「オイ、そのままだとパンツ汚れるぜ?俺も脱ぐし脱げよ」
「脱ぐの?!ここで?」
「精子が出るからな」
「せ…ーし?あ、どうしよう…なんか…尖がる感じ…」
十代は無自覚に勃起した自分の性器がズボンに擦れ、我慢できずに自分でズボンのボタンを外す。
押し上がったブリーフがつんと上を向いて、十代は苦しそうに口をぱくぱくさせた。

「ヨハンっ、俺、怖い、助けて」
「おわっ」
十代は怖さのあまりヨハンにしがみつき、助けを求めて涙を浮かべる。
「………遊城、お前……」
顔を紅潮させすがりつく煽情的な十代にヨハンの下半身が反応した。
「なんか…女みてー…かわいい」
優しく抱き寄せて十代を膝の上に乗せると、ズボン同様パンツも下ろしてやった。
ヨハンはいつの間にか上着を脱ぎ、自分も下を開放している。
「俺のちんこ…腫れてる……びょ、病気?」
「心配ない、ただの生理現象だぜ。俺が治してやるよ」
「あっ」
ヨハンの指が輪を作り、慣れたように十代のものを上下させた。
「ああっ、ヨハン…!それ…っだめ…っ あぁっ」
ヨハンにしがみついたまま、十代がビクリと反応し抱きしめる力が強くなる。
「ほら……?自分の手でしてみな…?」
「はぁ、はぁ……む、無理っ、ヨハン…っ、先っぽがじんじんして……おしっこ出そう」
「しょうがないなぁ」
ヨハンは宙をかいていた十代の手を取り、握らせると自分の手を重ね、一緒に律動を繰りかえす。
「つか、お前がエロい声出すから、俺も盛り上がってきた」
「な、なんか堅いのがお尻にあたってる…」
「俺も遊城と同じってこと」
ヨハンは空いた手で十代のシャツをめくりあげると、胸にある薄ピンクの突起に口付けた。
ビデオで女の人がされていたことと同じだと朦朧とする意識の中で十代は思いながらも、
チロチロと動くヨハンの薄い舌がくすぐったくて、気持ちがいい。
息遣いの荒くなる二人はもはやテレビなど見ていなかった。
ヨハンは十代への動きをやめることなく器用にテレビを消すと、
十代の掠れた声だけが部屋に響いていやらしい水音が充満していく。

「うぅっ……出る、もう出る…っ」
ビクビクと小刻みに震えたかかと思ったら、十代はその後ついに射精した。
「んんっ、ああ、あー………」
白濁の液はヨハンの手の平に放たれ、受けきれなかったものがヨハンの体に飛ぶ。
十代は体中を駆け抜ける快感というものを初めて経験し、その余韻に浸るように倒れこんだ。
「……………」
濡れた下半身をヨハンは熱っぽい目で見つめ、手についた蜜を十代の割れ目に沿わせた。
すでに重力を失った十代の屹立をしごき、残った精液を搾り出すように動かすと、
十代の後ろの蕾をくすぐり、さらに塗りこむように穴の周りに撫で付けた。
「…………入れたいなーここ」
「……!?な、なに?」
驚いて十代は身を起すが、ぬめりを帯びたそこはヨハンの指の侵入を簡単に許してしまう。
「あっ、ちょっ、とっ…」
まだ柔らかい子供の肉は順応性が高く、ヨハンが双丘を揉みしだいてその入口を伸縮させた。
「待てっ、て…っ、俺に…入れるのか?」
「うん。さっきのビデオの女の役」
「や、やだっ、俺にちんこ入れないで」
「入れない入れない」
って、堅いの押し付けてるし……っ
十代は逃げ出したい気持ちになったが、ヨハンがまた自分の前も弄び始め、
再び下肢に熱が集まり動けなくなる。
ヨハンは無邪気に微笑みながら十代の小さな入口に先端をあてがうと、
ぬめりが導くまま十代の中へ侵入した。

「………あっ………、……………」
「はぁ…はぁ…っ………………キツ…………」

根元まで一気に沈めたヨハンは、温かさと締め付けを味わうように恍惚と目を閉じる。

「い、いたいっ、いたっ」
入った瞬間何が起きたのかわからず、呆然としていた十代は後からやって来た痛みにポロポロと涙をこぼした。
「抜いてっ、早くーっ、いたいっ」
「あ、ちょ、暴れんな」
十代が動くたびに刺激され、ヨハンも今にも射精しそうだった。
「待てよ、ほら……ゆっくり、息して」
「うう……引っかかって抜けない…」
膝にからまった衣服はいつのまにかもつれ、二人の足をがんじがらめにしている。
「……あれ…なんか痛くなくなったかも………?」
しばらくすると少し慣れたのか、異物感はあるものの息を吐けばなんとか耐えられるほどになった。
「そうか……じゃあ動くぜ」
「でも…っあ、あ、…っヨハンっ!………」
律動を解したヨハンに揺さぶられる度、十代は射精とはまたちがった何かを感じていた。
それが何かはよくわからなかったが、擦られると、くすぐったさはやがて気持ちのいいものに変わり、
もっと欲しくて、もっと激しくしてほしいと思い焦がれる。

「んぁっ、あっ、んんっ、ヨハ…ぁんっ!!」
「……っ、出る…っ」

 

* * *


エッチの意味を知るどころかいつの間にか夢中でそれをしてしまった十代は、
性を知った優越感よりもいけないことを知ってしまったようで不良になった気分だった。

「遊城、キスしよ」
寝転がって息を整える十代に、ヨハンが唇を寄せた。
「キス……って男と女がするもんじゃないのか?」
「いや、好きな人とするんだぜ」
ヨハンは十代の同意も得ないまま勝手にキスをした。
ちゅ、っと音がして十代は恥ずかしくて身をよじる。
「好き………ヨハンが俺のこと…?」
「好き…みたいだな。最初はお前のこと女だと思ってて。ほら、お前髪長いだろ?」
「これは母さんの趣味で…」
「だからさ、名前聞いたときショックで。ちょっとへこんでたんだけど」
「ああー…それで」
自分が声を出した時の驚いたようなヨハンの顔を思い出した。

「でも、なんかそんなのどーでもよくなった。遊城そこらへんの女子よりめちゃかわいいし」
さらにすりよって十代のうなじや首筋にヨハンが唇を落とす。
「かわいいとか言うな」
十代はヨハンの言葉に拗ねて顔をそむけた。
「ふふ…………でも気持ちよかっただろ?」
「………………うん」
「またしたい?」
「うん」
「俺以外とはすんなよ?」
「……………なんで?」
「俺が妬くから」
「………………ヨハンは4組の子とつきあってるって聞いた。二股はよくない」
「4組……?ああ、なんか告られたなそういや。別につきあってないぜ?」
「そうなのか?」
人の噂なんていいかげんなものだと十代は思った。
「うん。遊城が本命。俺の初恋だもん」
「でもさ、そーいうのって普通初めに言うもんじゃないのか?」
「う……まぁな。俺なりにでも勇気がいったんだぜ。男同士だし」
「おとこどーし…」

「遊城は俺のこと、好き?」

「……………わかんない」

正直なその言葉に、ヨハンはがく、っとうなだれる。
「んじゃま、これからゆっくり好きになってもらいますか」

体を重ねた後にする初めてのキスに十代は目を閉じた。
少し甘い、ヨハンの髪の匂い。

小さな舌を絡ませ合って唇を離す。
唾液を味わうようにペロっと舐めたヨハンに、十代がドキっとしたのはまだ内緒だ。

 

 

END 








back