● キス時に目を瞑るのはどっち?
(共通テーマ:禁断の恋 R-18) written by 緑豆
(ヨハン)
ヨハンが出会ったのは、不思議な雰囲気を持つ少女だった。 たくさんの取り巻きに囲まれながらも、とても退屈そうにしている。 そんな彼女に興味をもち、気づいたら恋をしていた。 ヨハンは、思いついたらすぐ行動する方である。 友人たちが止めるのも聞かず、ヨハンは放課後の教室で彼女に告白した。
「十代。好きなんだ。俺と付き合って欲しい。」
十代は大きく目を見開くと、その表情をゆっくりと妖艶なものへと変えていった。
「君。本気?」
至近距離で覗き込まれて、ヨハンはドキドキする。 嘘は許さないと言わんばかりの瞳には、ヨハンの姿が映し出されていた。
「本気…だよ。」
ヨハンがそう答えた瞬間、教室内に淫靡な空気が漂い始める。白いシャツに透ける下着に思わず目が行ってしまう。 ヨハンが唾を飲み込めば、彼女は嗤った。
「いいよ。ちょうどおもちゃ(愛玩具)が欲しかったところだから。」
「え?」
「いい子でいたら、気持ちいいことさせてあげる。でも、他の人の事は見ちゃダメだからね。」
下半身を密着されて、ヨハンは何度も頷いた。 今すぐ目の前の少女を抱きたい。 その思いが分かったのか、十代はヨハンを誘った。
ヨハンは選択を間違えたのかもしれない。 ヨハンは確かに十代を抱く事ができた。だが、手に入れることは出来ていない。
「ん…上手…。」
十代の命じるがままに、ヨハンは彼女に触れる。ヨハンは、十代の性欲を満たすためにいるようなものだった。 今だってそうだ。 自室へと戻った十代は、ベッドに座って足を開くと、ヨハンに秘裂を愛撫するよう命じてきた。 そして、ヨハンはその命に従い、犬のように舐めまわしている。十代の機嫌がよくなければ、挿入など許されない。とんだ拷問だ。 しかし、十代は嘘を付いていない。 おもちゃ(愛玩具)が欲しかったというのは本当。他の人を見てはいけないというのも本当。 十代はヨハンが女を見ることを許さなかった。それどころか、告白した次の日から家にも帰らせてもらえない。 学校が終われば十代の家に行き、十代の家から学校に通う。そんな毎日だ。 学校でも家でも、常に十代と一緒。 どこであろうと、十代の気持ちが高ぶれば、すぐに行為は始まる。
十代の一族は、庶民でも知っているような有名な財閥だ。そして、その一族は女が権力を持つのだという。 男は彼女たちを満足させるための玩具。囚われたら逃れられない。彼女たちが飽きるまで囚われ続ける。 所詮噂であろうと高を括っていたのだが、ヨハンは身をもって実感する事になった。 十代の住む屋敷には、彼女の姉妹も住んでおり、それぞれが複数の男を飼っていた。 十代に連れられて初めて屋敷に行ったとき、まるで物を見るように見られたのは、衝撃だった。 そして、彼女たちの周りにいる男たちは、一様に目が死んでいた。 囚われ続けた男たちの末路に、ヨハンは背筋が凍る。 いつか自分もあのようになるのだろうか。
「おもちゃ(愛玩具)が一人前に考え事?」
「すみま…せん。」
口答えは許されない。しようものなら、思い出したくもないような事をされる。その事実が、ヨハンを従順にした。
「何を考えていたの?ここ、こんなにしておいて。」
「く…っ…。」
足で股間を踏み潰され、ヨハンは思わず射精しそうになった。 十代に散々仕込まれたヨハンは、十代に何をされても達せる身体になってしまっている。ヨハンにとって、快楽も痛みも同等だ。
「ふふ。イかなかったんだ。えらいえらい。じゃあ、ご褒美上げないとね。」
十代は、自ら秘裂を割り開くと、ヨハンに微笑みかけた。
「入れさせてあげる。」
ヨハンは十代の足を抱えると、一気に挿入した。まるで飢えた獣だ。そう思うが止められない。何せ数日振りなのだ。 十代の身体を愛撫するのは毎日の事だが、挿入どころか、射精も禁じられていたのだから、止まる事などできない。 一心不乱に腰を動かすヨハンを、十代は余裕の表情で眺めている。 いつだって、余裕がないのはヨハンの方。性欲が強いのは十代のほうだというのに、おかしな話だ。 そもそも、十代はおかしい。 十代の処女はヨハンが貰った。それ以降もヨハンしか十代を抱いていない。 だというのに、十代のテクニックは異様にすごかった。初めてのときから、快楽を楽しむ余裕さえある。 セックスをするために生まれてきたのではないかと思うほど、十代はセックスに慣れている。
「十代…十代…。」
「あん…。もうイっちゃうの?」
「ごめん…もう…っ!」
「しょうがないな。ねぇ。キス…して。」
要望に応えるべく顔を寄せれば、十代はそっと目を閉じる。 触れるだけの口付けを何度か交わした後、ヨハンは十代の締め付けにより達した。
腕の中で眠る十代を見ながら、ヨハンは十代の髪を梳いた。 寝ているときの十代は、少女と言う言葉がよく似合う。情事のときとは別人。だが、どちらも十代。とちらも愛しい人。
「おもちゃ…か。」
飽きたら捨てられる運命の男達。本人の意思など関係ない。全てを決めるのはおもちゃの主。 十代も、姉たちのように複数のおもちゃを持つようになるのだろうか。そして、気まぐれにその身体を開き、おもちゃ達に慰めさせるのだろうか。 それを思うと、ため息ばかりが出てくる。 十代に惚れてはいけない。十代に興味を持たれてはいけない。 友人たちの忠告の意味が、今になってよく分かる。 だが、過去に戻ったとしてもヨハンは十代に告白しただろう。この恋心は止められない。 性欲処理のための道具であったとしても、他の誰かが十代に触れるくらいなら、自分がおもちゃになろう。 どれだけ不毛であっても、ヨハンはこの恋心を捨てるつもりにはなれなかった。
(十代)
十代は、姉たちのようにおもちゃをいっぱい欲しいとは思っていなかった。 ヨハンという馬鹿な男が告白してこなかったら、おもちゃなどに興味をもたなかったかもしれない。 十代は一族の中で異端であった。 十代くらいの歳になれば、2、3個おもちゃを持っていて当たり前。 姉たちなど、とっかえひっかえしているので、いったいどれくらいおもちゃを持っているのか分からない。 だというのに、十代はまったく興味がなかった。 確かに、おもちゃで遊ぶのは気持ちがいい。癖になるのも分かる。だが、そんなに数が必要だろうか。
「ねぇ。キスして。」
目を閉じて待っていれば、触れるだけの口付けが繰り返される。 そっと目を開けて様子を伺えば、切羽詰った様子のおもちゃの顔が見えた。 姉たちのおもちゃに負けないくらい端整な顔立ちだ。この顔なら女に困らないだろう。 そんなやつが、十代のおもちゃであることが理解できなかった。 逃げたそうな雰囲気があれば、逃がしてやろうと思った。でも、逃げる様子がない。 十代は姉たちのようにおもちゃを嬲る趣味はないから、逃げられるというのにだ。
「ねぇ。何か望みはないの?」
「え?」
「誕生日…なんでしょ?今日はなんでもお願い聞いてあげる。」
クラスメイトがたまたましていた会話の中に、その情報は含まれていた。 祝おうという気は別にない。だがそれは、ヨハンがおもちゃという立場から逃げるいい口実になるだろうと思ったのだ。 おもちゃを所有するという経験は出来たのだし、別に手放してもいいと思っている。 しかし、答えは十代の予想に反するものだった。
「十代を抱きたい。」
「…いつもしてるでしょ?」
「俺の意思で、俺として、俺の思うがままに、十代と交わりたいんだ。」
「それでいいなら…いいけど。何でもいいんだよ?」
「俺の名前を呼んでくれたら、もっといい。」
「…変なヤツ。」
十代に弄られすぎて、おかしくなってしまったのだろうか。 だとしたら悪い事をした。 やはり、おもちゃなど持つのではなかった。 おもちゃに見られていると思うと心拍数が上がるし、おもちゃに触れられると身体の奥が濡れてくる。 おもちゃが嬉々として十代の上に覆いかぶさってくるのを見ながら思った。
「おもちゃってわからない。」
「十代。」
「なに?」
「名前。呼んでくれないのか?もしかして、わからない?」
落ち込む姿は、まるで子犬のようだった。 十代の中のが少し縮んでしまった気がして、十代は慌てる。
「名前くらい知ってるよ。ヨハン。」
名を呼んだ瞬間、胎内のものが大きくなった。 思わず呻けば、宥めるように背を撫でられる。
「ごめん。でも、本当に俺…十代が好きだから。お願いだから、俺以外のおもちゃを持たないで。」
「別に…欲しくないし。」
「本当に?」
「うん。おもちゃはヨハンだけで十分。」
「そ…っか。よかった。」
一体今の流れのどこに、安堵する要素があるのか。 毎日相手をさせられて嫌じゃないのだろうか。
「なぁ、十代。キスしてくれよ。」
「いいよ。」
望みをかなえるべく、十代はヨハンに顔を寄せた。 だが、近づいたところで十代は動きを止める。
「目…閉じないの?」
「十代の表情見ていたいから。」
「見てても楽しくないと思うけど。」
「楽しいとか楽しくないじゃないんだ。十代の全てを見たい。それだけだよ。」
ヨハンはそういうと、十代に口付けてきた。 要望と違うじゃないか。 そう思ったが、ヨハンがあまりにも幸せそうな顔をしていたので、十代は放っておく事にした。
END
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