● 意外に健全思考。
(共通テーマ:禁断の恋・キス時に目を瞑るのはどっち?の続き) written by
緑豆
ヨハンが十代のおもちゃになってから、早一年。 誕生日のお願いを、十代は叶え続けてくれていた。 誕生日限定だと思っていたが、そうではなかったらしい。 名前を呼んでくれるし、ヨハン主導ですることも出来る。まぁ、大半は十代に主導権を握られてはいるが。
「ヨハン。奥に来て。いっぱい出して。」
「じゅ、十代?!」
「駄目?」
「駄目?って…今日はゴムしてないんだぞ?」
ストックを切らしてしまったのは、迂闊だった。 快楽優先な十代は、ゴムなど煩わしいもののようで、ピルでの避妊の方が好みだ。 行為の回数を考えればピルを併用した方が安全だが、十代はあいにくと身体に合わないらしく、具合が悪くなりやすい。 気持ち良くなれば、具合の悪さなど忘れるというのが十代の持論だが、それは流石にどうだろう。 妊娠の危険は増すが、ヨハンは、ピルの服用を止めさせていた。 危険な日は挿入しないなどの対策を取っていたが、今回はゴムが無いにも関わらず迂闊にも乗っかられてしまっている。 比較的危険が少ない日とはいえ、中出しなど論外だ。 しかし、十代は不服だったのか、ヨハンを締め付けてきた。
「十代。駄目っ…だっ。」
「口答えは許さない。」
十代が本気を出したら、ヨハンの抵抗など無いに等しい。 あっという間に追い詰められたヨハンは、悲しいくらい簡単に達してしまった。 頬を紅潮させている十代も、絶頂を向かえたのか快楽の余韻に浸っている。
「ん……。」
ヨハンに身体を預ける十代を、ヨハンは抱きしめた。 出てしまったものは仕方がない。 焦って始末をするより、余韻に浸る事をヨハンは選んだ。
「ヨハン…。」
「ん。何?」
「もう一回。」
ヨハンが何か言う前に、十代はゆっくりと腰を動かし始めた。 十代の中で力を失っていた自身が、ゆっくりと力を持ち始めるのが分かり、ヨハンは焦る。
「十代。本当にやばいって。」
「何が?」
「え?」
「何がやばいの?やばいことなんて…何もない。」
十代は怒っているようだった。 完全に嗜虐モードになってしまっている。こうなったら、ヨハンには、もうどうすることもできなかった。 その後、ヨハンは散々焦らされた挙句、十代の中に連続で熱を放つ事を強制された。
もう勃たなくなるんじゃないかと思った日から1週間。 ヨハンは溜まりに溜まっていた。 ほぼ毎日交わっていたというのに、この1週間、丸きり何もしなかった。 十代の刺々しい雰囲気も、一切変わることなく今日まで来ている。 これは由々しき事態だ。 性欲の強い十代が、我慢できるはずもない。現に、十代の色気は最高潮に達していた。 ヨハンが十代に囚われた時に哀れみの目を向けていた友人達も、十代の事を気にしてちらちら見る程だ。 このままでは、十代がヨハン以外のおもちゃを手に入れかねない。 それだけは断固避けたい自体だ。
ヨハンが目を光らせてから、さらに1週間が経った。 十代がおもちゃを手に入れようとする気配はない。だが、十代はヨハンに抱かせようとしなかった。 ありえない。 あれだけ求め合っていたのに、何もなく過ごせる筈などないのだ。 しかし、十代は頑なにヨハンを拒絶し続けた。 ヨハンは今日も、右手をお供に処理をしている。 何が悲しくて、学校のトイレで抜かなければならないのか。 十代の色気にあてられたヨハンは、気づくと勃っている。 だが、それはヨハンだけではなかった。 十代の隣の席のやつなど、昼休みになると必ず前かがみでトイレに向かっている。 以前だったらぶん殴るところだが、今は同情の方が強い。 何せ、本当に辛いのだ。体がもたない。そのことは、ヨハンも身をもって知っていた 今日こそは抱かせてもらおう。 ダメでも、襲う。 ヨハンはもう我慢の限界だった。
帰宅したヨハンは、十代を襲う気満々で十代の元へ向かった。 ちなみに、以前は十代の部屋に住んでいたヨハンだが、抱かせてもらえなくなって以来、別の部屋が与えられている。 嫌味なくらい離れている部屋を割り当てられたと知ったときは、顔が引きつったものだ。
「十代。入るぞ。」
ノックをして、返事を待たずに部屋に入る。
「何か用?」
十代は、おあつらえ向きにベッドの上で横たわっていた。
「抱きに来た。」
「いや。」
「いや…って。十代だって限界だろ?意地張るなよ。」
ベッドに腰掛けて髪を梳けば、十代は甘い吐息を漏らす。これっぽっちで感じているのだ。 だが、十代は首を振る。
「ヨハンとはしない。姉様のところに行くからいい。」
「そんなのダメだ!十代を他の男に触らせるものか!」
「そんなの私の自由だもの。」
「ダメったらダメだ。あ、こら、ちょっと待てよ!」
十代はヨハンを置いて、長姉の遊び部屋へと向かってしまう。 拘束して引きとめようとしたものの、実際に拘束されたのはヨハンの方だった。
「くそっ。離せよ!」
「おもちゃは大人しくしていろ。」
この屋敷では、十代のおもちゃであるヨハンの意見など無視される。 たとえ十代がヨハンをヨハンとして扱ってくれても、所有者である十代の行動を阻害する事など許されなかった。
「十代!十代!」
ヨハンに出来たのは、長姉の部屋へ吸い込まれていく十代を見送る事だけだった。 扉が閉まるのを見届けたのと同時に、ヨハンは目の前が真っ暗になるような気がした。 もうどうすることもできないのか。 そう思ったヨハンの耳に、涼やかな声が聞こえてきた。
「離してあげなさい。」
その声は、ヨハンの愛しい声によく似ていた。
「ですが、これは十代お嬢様に…」
「それは、十代のお気に入り。あの子の機嫌を損ねたくなかったら、丁寧に扱いなさい。」
「畏まりました。」
捩り伏せられたせいで痛む腕を摩りながら、ヨハンは救い主を確認する。 礼を言わなければ。 だが、確認したところでヨハンは固まってしまった。 十代とそっくりの容姿。 十代より露出の少ない格好。 そして、底冷えするような金色の目。 二番目の姉だ。
「十代は姉上のところか?」
「は…い。」
「そうか。」
じっと見つめられて居心地が悪い。 助けて貰っておいて何だが、早く立ち去って欲しいというのが、本音だ。
「静かにしているなら、入れてやってもいい。どうする?」
「え?」
「お前次第だ。」
女神の導きか、悪魔の囁きか。 どちらだとしても、ヨハンの決定に変わりはない。 入らなければ、十代がヨハン以外に触れられてしまうのだ。
「入れて下さい。」
ヨハンは、誘いに乗ることにした。
淫靡な空気が部屋に満ちている。 その発生源は、部屋の奥で女王然として優雅にソファに座る長姉と、その腕に抱かれて頬を上気させている十代だった。 二人とも薄絹を纏っているが、薄すぎて肌の色が透けている。 ヨハンをいとも簡単に煽るそれを、十代がヨハンの前で着たことは無いから、長姉に貸し与えられたのだろう。 長姉の周りに立つおもちゃ達の中にも、それに似たものを身に纏っているものがいる事から、情事専用の物だと思われる。 その服…いや、布越しに胸をもみしだかれ、十代は甘い吐息を漏らしていた。 布が擦れるのも堪らないと言わんばかりに、足を落ち着かなく擦り合わせていた。 しなやかな足を割り開けば、愛液が滴っている事間違い無しだ。 与えられる快楽にうっとりとしている十代を見て、ヨハンは唇を噛み締める。 ヨハンだけが知ればいい表情が、多くの者に晒されてしまった。 今すぐにでも十代を己の腕に閉じ込めたい。 だが、それは叶わなかった。 ヨハンは今、長姉の気配に飲まれてしまっている。勝てる気がしない。 長姉はヨハンに視線を向けようともせず、全く相手にされていなかった。
「十代……。」
長姉の手が、十代の身体のラインをゆっくりとなぞる。 いい所に触れられる度に、十代は嬉しそうに啼いた。 もう止めて欲しい。 十代が気付かないかと視線を送っていたが、その気配は全くなく、快楽に没頭しているようだった。 ヨハンが見ている前で、長姉はおもちゃを呼びよせた。 長姉に何事か囁かれたおもちゃは、十代の足先に這い蹲ると口を寄せる。
「やめっ!!」
思わず駆け出そうとしたヨハンを止めたのは、ヨハンを部屋に入れてくれた、もう一人の十代の姉だった。
「見たくないなら出ていけ。」
冷ややかな声でそう言われ、ヨハンは反発しようとした。 だが、その前に十代の悲鳴にも似た嬌声が聞こえてきた。 嫌な予感がしながら視線を向ければ、十代はヨハンが見たこと無いくらい身悶えている。 長姉のおもちゃは、まだふくらはぎに舌を這わせているだけなのに、だ。 ヨハンが愛撫しても、こんな反応をしたことはなかった。どれだけ愛撫しようと、常に嫣然と微笑むだけだった。 それがどうだ。 今の十代は、まるで生娘のようではないか。 ヨハンは黙って部屋を出た。 だが、離れる事も出来ずに、ドアの側に座り込む。 部屋の中からは、楽しそうに笑う姉たちの声と、喘ぎ続ける十代の声が聞こえた。 十代はもう、ヨハンを必要としないのか。ヨハンに飽きてしまったのか。 様々な考えが頭の中に渦巻くが、答えは見つからない。 どうしたらいいのか分からない。 しばし放心していたヨハンだが、名前を呼ばれた気がして背にしていた扉を見た。
「…気のせいか。」
あまりにも十代を求めすぎて、脳が勝手に十代の声を再生したのだろう。 そう思ったのだが、ヨハンの耳に届いたのは、十代の嬌声ではなく悲鳴だった。
「十代!」
反射的に部屋へ踏み込んだヨハンが見たのは、怯えたように身体を震わせる十代だった。 慌てて駆け寄れば、ヨハンに気付いた十代は、何も言わずに抱き着いてくる。 一体何があったのか。 楽しそうに笑っている長姉と、乾燥ワカメを水で戻したけれど また乾燥してしまったかのように十代の足元で伸びている長姉のおもちゃだけでは、全く想像がつかなかった。 十代を抱きしめる腕に力を込めながら、ヨハンは困ってしまう。 半裸に近い十代を男達の視線に晒したくない。 だが、ヨハンと十代はもっぱら喧嘩中(十代が怒っているだけだが)だし、 今居るのは、姉妹の中でも最も恐れられている長姉の部屋だ。勝手に退出など出来なかった。
「お前。十代のおもちゃだね。」
疑問系ではなく断定。 見透かすようなオッドアイに見つめられ、ヨハンは怯んでしまう。
「別に取って食いはしない。まぁ、十代を一人で満足させられる程のナニには興味あるけれど。」
「あの、その。」
味見でもしているかのように見られ、ヨハンは鳥肌が立った。 魔性の香りがヨハンを誘う。 熟れに熟れた禁断の果実が目の前に差し出され、禁忌と分かっていながらも、手を出さずにはいられない、そんな感覚だ。 ごくりと生唾を飲んだヨハンだったが、腕の中のぬくもりで我に返った。 ああ。 ヨハンの禁断の果実は、ここにあるじゃないか。
「十代。部屋に戻ろう。ほら、腕を回して。」
十代は無言で首に腕を回してきた。 首元に顔を埋められ、愛しさのあまりついニヤケれば、長姉があからさまなため息をつく。
「少しは遊んでくれてもいいんじゃない?気持ち良くして上げるし。」
「姉上。「お気に入り」に手を出すのはルール違反。」
「分かってる。言ってみただけ。」
言ってみただけと言いながらも、長姉の視線はヨハンを犯していた。 このままでは本当に食われかねない。 ヨハンは逃げるように退出をしたが、止められる事はなかった。
無事に部屋に戻れてほっとしていると、十代が何か言ってきた。
「十代。ごめん。聞こえなかった。もう一回言って。」
「…お風呂。お風呂入る。」
「わかった。」
ヨハンは、十代を抱きかかえたまま、浴室へ向かった。 各部屋に備え付けの浴室は無駄に広く、ナニをするにも苦労しない。 片手でドアを開けて、十代を下ろすと、ヨハンは入浴の準備を開始した。 だが、十代は何が不満なのか、ヨハンの服を引っ張ってくる。
「今準備出来るから。」
「そんなのいい。」
「いや、でも。」
「早く洗って。」
「…了解。」
一瞬間が空いてしまったのは、十代のわがままに呆れたからじゃない。 嬉しかったからだ。 ヨハンはスポンジを手に取り、手早く泡立てて十代の肌にそっと滑らせた。 まずは、十代が差し出して来た足から。 泡で包み込みながら、優しく洗っていく。 後少しで足の付け根。 そこまでいったところで、十代はシャワーで泡を流してしまった。
「もう一回。」
スポンジの泡も流されてしまったから、また泡立て直しだ。 ヨハンは同じ作業を繰り返し、十代もまた何度も洗うように命じた。 そろそろ十代の肌がふやけてしまう。 どうしようかと思っていたら、十代は命令を変えてきた。
「舐めて。」
「ああ。」
喜んで。 ヨハンは喜々として、十代の足に舌を這わせた。 久しぶりに味わう十代の肌を、ヨハンは丹念になぞっていく。 足の先から、膝の裏まで、余す事なく触れた。 太腿を舐めているところで、十代の秘部が目に入る。 吸い寄せられるように顔を寄せたが、それは十代によって止められてしまった。
「まだお預けなのか?」
「そこは触られてないから、しなくていい。」
それを聞き、ヨハンは両手で脚を割り開くと、問答無用で愛撫を開始した。 飢えた犬のように零れる愛液を貪るが、十代は太腿をビクビクさせるだけで、文句は言わない。 唇からは甘い声が上がるだけだ。
「ヨハン。」
「ん?」
「もっとちょうだい。」
十代はヨハンの服に手を掛ける。 それに倣ってヨハンも十代を脱がすと、十代はヨハンに抱きついてきた。
「やっぱりヨハンがいい。姉さまのおもちゃが、あんなに下手だなんて思わなかった。」
「十代を満たせるのは、俺だけだよ。」
「ヨハン…生意気。」
十代の中に猛りが飲み込まれていく。 思わず呻けば、十代に唇を啄まれた。 啄み返してやれば、十代は楽しそうに笑う。
「熱いのいっぱい頂戴。」
「十代…そうしてやりたいのはやまやまだけど、子供できちゃうぜ?」
「?そんなヘマするわけない。」
「ヘマって…。」
「そのくらいコントロールできる。」
いやいやいや。無理だから。 だが、十代の一族だったらできそうだと思ってしまうのもまた事実。 コントロール出来なければ、姉妹の数が3人で済むわけがないだろう。しかも、誕生日がほぼ一緒だなんて、一体どんな偶然か。
「あ〜…うん。まぁ、出来ちゃったら…俺、頑張って働くよ。」
「だから。大丈夫だってば。まだヨハンといっぱい遊びたいし。」
遊ぶといいながら、きゅうきゅう締め付けてくるのは止めて欲しい。
「十代。ベッド行こう。風呂場は危ない。」
「いや。シャワー浴びながら後ろから突いて。」
壁に手を突いて腰を突き出され、応えないバカはいない。
「立ってられなくなったら、言えよ。」
「やっぱり生意気。」
振り返って文句を言う唇を塞ぎながら、ヨハンはシャワーのコックを捻った。
「姉上。「お気に入り」は無事ですか?」
「ああ。平気。私の「お気に入り」はタフだから。」
十代と十代の「お気に入り」が立ち去った後、長姉はもう一人の妹とお茶をしていた。 最近の二人の話題は、もっぱら十代の事だ。 なかなか「おもちゃ」を手に入れようとせずヤキモキしていたのだが、十代は「おもちゃ」ではなくいきなり「お気に入り」を手に入れた。 「お気に入り」の維持は大変だからと心配していたのだが、どうやら杞憂だったらしい。 だが、十代自身が「お気に入り」ではなく「おもちゃ」だと思っているのが、おかしいところだ。 使い捨ての「おもちゃ」と、継続使用する「お気に入り」」 自分たちが本気で掛かったらあっさりと枯れ果ててしまうから、「お気に入り」を潰さないためにも、「おもちゃ」は必要だし、 「お気に入り」も複数持つ。ずっと使っていくには、手入れが必要だし、しつけも大事。時には我侭も聞いてあげる。そこの匙加減は非常に難しいのだ。 本当なら「おもちゃ」で慣れておいてから「お気に入り」を作るのだが…
「十代の様子だと、「おもちゃ」を持つのは難しそうですね。」
「まさか「お気に入り」以外に触れられるのが嫌だなんて。でも、あの「お気に入り」は随分と十代にご執心のようだし、何とかなるでしょ。」
「そうであることを願います。」
「行くの?」
「ええ。「お気に入り」と食事に行く約束をしているんです。」
上の妹は「お気に入り」の手入れに余念が無い。 「お気に入り」の一人に随分と執着心が強いのがいるが、十代の「お気に入り」ほど性力が強くないらしく、うっかりするとヘタれてしまうのだとか。 3人目を探すか、「おもちゃ」を増やさないと、「お気に入り」を維持できないと、よく嘆いている。
「私も、「お気に入り」の手入れでもしようかしら。」
弄り甲斐のある「お気に入り」達に視線を向けながら、長姉は微笑んだ。
END
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