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●探してごらん。


(大人ヨハ十)
written by Saina

この鍵を君に。の続編です。



「ない、ない…ああぁ――!どこに行っちまったんだよ!!」
「十代?どうした…げぶっ!」
「入るなヨハン!外で待ってろ!いいか!ぜぇーって入るな!」

そう言われると余計に入りたいじゃないか…とドアの外に捨てられたヨハンは後ろを見ながらため息をつく。
「さっきから何探してんだ?十代は」
『大人には聞いちゃいけない事があるよ?ヨハン』
「…今のアイツを見て『大人』と言えるか?」

思わず中の十代を覗く。
必死に何かを探していて、まるで大事なモノを失くしたみたいに青年は焦っている。
しかもそのおかげで部屋はめちゃくちゃにされて、布団や本に椅子もフロアに乱れていた。
(あとで片づけないとな…っと、その前には…)
アイツを落ち着かせよっか
と思いながらドアを開こうと思う同時にドアはすでに開かれ、扉は青年の顔にダイレクトアタックした。
「…ちょっと出かけてくる」
「いってぇ…って十代!オイ!」
十代の腕を掴み、ヨハンはアタックされた顔を撫でながら聞く。

「どうしたんだ?さっきついたばかりじゃないか」
「大事なモノを無くしたんだ!ヨハンっ早く離してくれよオレは早く探しに行かないと誰かに取られちまったらあぁあああ」
「あーとりあえずさ」
落ち着けよ?
と腕を掴む手が十代の指と繋ぐ同時に口唇は重なった。

あっという間に暴動は停止され、突然の感覚と視線に十代は何度も目を瞬く。
深い口付けではなく、ただ唇に触るキスだった。

「…な?ちゃんと自分を落ち着かないと、見つかれるモノも見つからなくなるぞ?」
ゆっくり離れ、十代の頭を撫でながらヨハンは少し苦笑い。
「落ち着いた?」
聞いた瞬間に青年の力が抜けた。
奪われたように足が力を失くし、少し赤くなった自分に十代は顔を下げた。
「何やってんだよ…」
「そんな反応しなくてもいいじゃないか…こっちは色んな意味で傷付くぜ?」
腰を降ろし、十代を自分の肩に寄せ、腕を腰に回した。
「何か大事なモノでも失くしたか?」
「……うん」
「見つからなかったか?どっかに置いていたとかじゃなかった?」
「ずっと持っていたと思う。…大切で、大事なモノだから、離したことがない」
「…本当に見つからなかったか」
「――――…ヨハン」
「ん?」
「…ゴメン」
背中に腕を上げ、十代は小さな声で告げた。
「鍵、失くしちゃった」

ヨハンから貰った鍵を失くした。
彼はやっと居場所を見つけたのに、やっと『お帰り』と言ってくれる人と出会ったのに、彼はその証である鍵を失くした。
大切で、なにより大事なモノなのに。
「…ゴメン」
「なーんだ」
あっさりと言うヨハンに十代は顔を上げる。
そこに嬉しそうに笑うヨハンの笑顔があった。
「鍵はまた作ればいいんだぜ?俺、まだ鍵が持っているし」
「こういうことじゃねーって!」
「気持ちなら、何度でもできるぜ?」
額を合わせ、ヨハンは続いた。
「何度でも、十代にあげる自信はある。鍵でも、居場所でも、証でも」
――― 一生、俺はお前を想い続ける

「っとまぁ、プロポーズはまた今度にするから」
ポケットからあるモノを取り出し、モノを見た瞬間に十代は呆れた。
「これ、テーブルの下に落してたぜ」
「…―――元といえばお前のせいかぁ――?!!!」
!十代おちつけ!まて!鍋は投げるモノじゃない!落ち着いてぇー!
知るかぁ―――!!
と悲鳴はちょっとだけ屋敷に響いていた。


「…まぁ。見つかってくれてありがと」
「んじゃあお礼にキスしてくれ。十代からの」
「……」
「いや。冗談だ…、…ぇ?」

『ちゅ』
小さな可愛らしい音は唇から耳に伝わってきた。


探してごらん。
見つからない証けど見つけれる幸せ



END






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